何とかしたい
川崎ゆきお
「何とかせにゃならぬとは思っておるのじゃがなあ」
「はい」
「何ともならん」
「それは僕も同じです」
「まあよいかと放置しておる」
「僕は何とかチャレンジしていますが、うまくいきません」
「そうじゃろ。何とかなるものなら、もうとっくに何とかなっておる」
「方法が間違っているのかと思いまして、アタック方法を変えたのですが、変える度に結果は悲惨で、ますます難しくなります」
「そんなものじゃて。最初の方法がやはり妥当なんじゃよ。他にも方法はあるやもしれんが、それぞれに壁があり、それを越えられぬ」
「それ、分かります」
「じゃが、他の方法を試しとうなる」
「そうですねえ。目先を変えれば、簡単そうに見えたりしますね」
「まあ、何ともならんものは、何ともならんままでいくしかなかろうて」
「諦めるしか他ないのですか」
「諦めたわけじゃない。断念もせん」
「その状態が嫌なので、解決しようと励んでいるのですが…」
「それがだ、その壁がだ、乗り越えられ、解決した先に何がある」
「すっきりします」
「まあ、そうじゃが、次なる壁が待っておるんじゃ。その壁は、今までよりも高い」
「一度突破すれば、後は楽になると思いますが？」
「そこで、終わればな。だが、人は欲が強い。もう一つ上を目指そうとする」
「余裕があれば、やってみたいですね」
「また、同じことの繰り返しに陥る」
「でも、高いレベルを狙えるのですから、今よりも充実しますよ」
「充実しておるのなら、そこで留め置けばよい。だから、それが欲なんだ」
「よい欲を持ちなさいと教わりましたが」
「欲によいも悪いもあるものか」
「下を狙えばいいんだ」
「よく気づいたのう」
「下なら、簡単です」
「下のクラスなら、余裕を持って居られるじゃろ」
「はい」
「そここそが君の世界なんじゃよ。あらぬ上を見なければ極楽じゃよ」
「でも師匠も、何とかしなければと考えておられるのでしょ。それはどういうことでしょうか」
「思っておるだけよ。それは夢じゃ」
「なるほど。夢として受け止めるのですね」
「夢は必要じゃからのう」
了
2007年11月22日