小説 川崎サイト

 

異世界の妖怪

 
 異世界に飛び、色々な体験をし、戻って来た。しかし、夢を見ていたのだと言われた。
 その異世界の石でもいいので、何かを持ち帰っておれば、何とかなったかもしれない。動かぬ証拠。
 ただ、その石、調べると何処にでもあるような石で、年代などを調べても、よくある石だった。ただ、何処の石なのかは分からない。これもいくらでも落ちていそうな場所があるためだろう。
 または何処から運ばれて来た石かもしれない。工事用に。
 箕田が異世界に行ったのは寝床中。これがいけない。即、夢だと思われてしまう。もっと別の場所、妙な世界にワープ出来そうな場所とか、何らかのパニック状態になり、現実世界から異世界へ突き抜けてしまったとか、そういうのが好ましいのだが、寝床の中では、寝ていたんだろ。夢を見ていたんだろと言われるのは当然だろう。
 そして夢の中からでも石は持って帰れない。夢の中で宝物を発見しても、持ち帰られない。
 しかし、夢の世界の中に異世界の入口があり、そこへ行ったのかもしれない。その手の話は物語の中ではよくある。
「夢と現実とが曖昧なのではなく、夢と異世界とかが曖昧なのですかな」
 相談を受けた妖怪博士は、箕田から様子を聞く。なぜ妖怪博士のところへ来たのだろう。異世界と妖怪とは満更無関係ではないが、来るところを間違えたのかもしれない。
「それで、その異世界で妖怪を見たと」
「はい」
 それなら、妖怪博士のところに来てもおかしくはない。ただ、この人、異世界についての話をあまりしない。その詳細を。だからどんな場所で、何があったのかも。
「どんな妖怪でしたかな」
「妖怪のような妖怪でした」
 これも答えていない。
「なぜ、異世界だと思われたのですか」
「いつもの夢とは違うからです」
「それは何処で気付かれました」
「夢から変なとこへ移行したと、すぐに分かりました」
「どんなところです」
「変なところです」
 これも答えていない。
「そこは何処だと思われますか」
「異世界だと」
 答えていない。
「それで、私にどうして欲しいのですかな」
「話を聞いて欲しいのです。そして異世界があることを知らせたいのです」
「どんな世界でしたかな」
「異世界でした」
 また、答えていない。
「それで、あなたはそこから戻って来られたのですね」
「はい」
「異世界へ行ったことで、何か変わりましたか」
「いいえ、でも」
「でも?」
「異世界体験です」
「え」
「異世界を体験したことがこれまでとは違います」
「どのようにですかな」
「異世界があったのだ認識するようになったことが変わった点です」
「で、その影響は」
「ありません」
「あ、そう」
「異世界があるのです」
「では、一つだけ、一寸したことでいいので、教えてくれませんか」
「何をですか」
「どんなところだったのか、チラッとでもいいので」
「はい」
「では続けて下さい」
「そこは」
「はい、そこは?」
「異世界でした」
 
   了

  


2023年1月23日

 

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