小説 川崎サイト

 

そうですなあ

 
「急にまた寒くなりましたなあ」
「これは寒波ですよ」
「ああ、予報でありましたねえ」
「それが来ているんでしょ」
「道理で、寒いはずじゃ」
「でも、冬ならよくあることですよ」
「そうですなあ」
「ただでさえ寒い。だから、こういう寒波、たまに来ますが、おまけの寒さです」
「歓迎しないおまけですなあ」
「来てくれるなといっても来ますからね」
「願っても駄目ですな」
「願っても願わなくても、来るものは来ますよ」
「難儀だ」
「でも一寸寒いだけでしょ。それぐらいなら、取り立てて問題にするほどのことじゃない」
「そうですなあ」
「自然の摂理には逆らえぬ」
「そうですなあ」
「まあ、そのうち、寒さも引くでしょ。このままずっとこんな寒さが続くわけじゃない。数ヶ月後には初夏で、暑さが来るほどですから」
「そうですなあ」
「冬の寒さに耐える。これでしょ。しかし、我慢出来ないほどのことじゃない。暖かくしているか、寒いところに出掛けなければ、それほどのことではない。これは日常内ですよ。よくあること」
「そうですなあ」
「そのうち春がやってくる。暑い盛りの時は、そのうち涼しくなるって、思うのと同じですよ」
「そうですなあ」
「そればかりですねえ。あなた。私の独演会になってしまう。少しラリーを」
「そうですなあ」
「またですか。会話をしましょう。何か返して下さい」
「そうですなあ」
「故障しましたか」
「そうですなあ」
「じゃ、お大事に」
「そうですなあ」
 
   了

  


2023年1月25日

 

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