小説 川崎サイト

 

曇天

 
 朝から雨が降りそうで降らない妙な天気。
 下田はこういう日はこういう日に起こりがちなことを感じる。何が起こるのかを感じたわけではない。ただ、起こりやすいことなら何となく分かる。頼りない話だ。
 曇天。町も暗い。目覚めたときの室内も晴れている日に比べて暗い。当然気持ちも暗いとなるわけではなく、そこは特に変化はない。
 逆にすんなりとした気分で、決してスッキリとはしていないが、意外とクリアー。これは拘るものが少ないのだろう。すっと起きて、すっと支度をし、出掛けた。
 だが、先ほどのこういう日に起こりがちな事が気になる。気分は悪くはないが、どこか重い。
 気が重いのではなく、気圧が重いのだろうか。これは気持ちではなく先に体に来るはずだが、低気圧の影響を下田は過敏に受けるタイプではない。ちょっと重いかな、程度。
 普通なのだが、一寸違う。微妙なところ。だから何か異変のようなものが起こるかもしれない。この異変も、一寸異なる程度の変化で、異変と呼べるほど大袈裟なものではない。ここも微妙だ。ほんの僅かなため。この程度は無視していい程度。
 下田は繊細な人間ではない。人が持っている繊細さ程度は持っているが、過敏ではない。
 しかし、こういう日にありがちな判断というのがある。その行動も。
 ただ逸脱するほどの判断にはならない。その範囲内。これも一寸判断がいつもとは違う程度。決して変わった判断や、間違った判断をするわけではない。
 病んでいるようで病んでなく、病んでいないようでいて病んでいるようなはっきりとしない状態。
 いつも妙なことをやる人なら、こんな日は標準的なものなり、いつもは普通のことしかしない人が、こんな日は一寸違うことをやってしまうような気が、こういう曇天の日に起こるのだろうか。
 しかし、その日の下田は意外とクールで、冷静。いつもはもう少しだけ張り切っている。特に朝は元気がいいので。
 天気ごときで気持ちまで変わってたまるものかとは思うものの、それに引っ張られるのは、空気だろう。そういう雰囲気の中にいるため。
 そういう経験からか、下田は、こういう日は大人しくしておこうと思うようにした。
 
   了

 


  


2023年1月26日

 

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