小説 川崎サイト

 

予定調和

 
 疋田は予定表を見ている。作業の順序とか、それに関する資料とかも揃っている。あとはそれをこなすだけ。
 しかし数ヶ月先まであり、その間、それに専念することになる。やることが決まっている。自分で決めたことで、かなり細かいところまで決めている。完璧に近い。
 おそらく支障なく、出来るだろう。それに問題が起こりそうなところには、そのフォローとかも書き加えてある。別の方法とかを。
 箕田はそれを作っているときは楽しかった。あたかも未来を次々に決めていく感じで、一連の流れ、ストーリーのようなものも、感じられた。
 そしてそれをやっている箕田の姿も見えたりする。いずれも想像だが、おそらくそうなるだろう。
 先のことが決まるという安心感もある。何をすればいいのかが分かっているので。
 これで、完成したようなもの。明日からそれを実行すればいい。不安材料は洗い出しているので、その心配もない。
 だが、箕田は、これで終わったような気になった。
 その翌日、それがまた頭に浮かぶ。今日の予定は決まっている。それをこなさないと先へと進めない。予定が狂う。その内容よりも、予定をこなすことが目的になってきた。
 ここでサボればどうなるのだろうか。数日サボったとしても、予備日がある。しかし、それも使い切れば、もうない。そして初日やることは簡単なことで、難なく出来るはず。
 できるだけやりやすいことを初日に持ってきた。これなら出来るはずで、出来て当然なこと。だから予定と言うより、予想としては出来る。
 初日早々、何か乗り気がしない。それも予測されていたことなのだが、休む、というのは予定にはない。また、もう一度予定の組み方を変えると言うことも予定にはない。
 だから、やらないといけないのだ。やるために予定を組んだのだから、当然だろう。
 そして、それは自分で決めたこと。ただ、それを数ヶ月も続けるのかと思うと、何か窮屈だ。
 しかし、予定に従わないと、失敗するだろう。それに予定なしでは、全体が把握出来ない。また、前後関係もある。
 これが誰かから与えられたスケジュールなら、やるだろう。しかし、自分で決めたのがいけない。作成者は自分なので、すぐに変更出来る。
 別に自分自身で自分を縛っているわけではない。予定に従えば効率は良いし、一度作れば、あとはそれほど考えなくても済む。
 箕田は初日、休んだ。やらなかった。
 しかし、その翌日からはやり始めた。そうでないと、進まないため。
 そして数週間経った頃、予定通り行かないことが分かった。これは想定出来なかったが、なぜか嬉しかった。
 それで、予定を組み直すことになるのだが、これは楽しい。
 
   了


2023年2月3日

 

小説 川崎サイト