やる気
川崎ゆきお
「最近どうですか？」
「ますますやる気をなくしてるよ」
「それはいけませんなあ」
「やはり、いけないことなんだな」
「まあ、そうとも限りませんが…」
「おお、それは救いの言葉だ。悪いことではないかもしれないのだな」
「まあ、その可能性もありますかな」
「どんな可能性なんだ？」
「やる気を奮い起こす方法はいくらでもあります。ですが、それはやる気でしょうか」
「よく分からんが、どんなことだ？」
「やる気は自然に出てくるものかもしれないのですよ」
「自然にか」
「その場合はですなあ、やる気を起こす必要はないのですよ」
「それができんから相談してるんじゃないか」
「ですから、相談するようでは重症かと思えるのですよ」
「やる気が起こらないこともあるじゃないか」
「あなたは、ずっとじゃないですか」
「そうだな」
「しかし、やる気がなくてもやっていることが沢山あるでしょ」
「まあな」
「私が言いたいのは、やる気のないことはやらないほうが好ましい。です」
「だけど、これをやらないと先へ進めんのだ」
「そっちは無理なのかもしれませんな」
「何が無理だ？」
「方向です」
「ああ。それはある。だから…」
「ブレーキがかかるのでしょ」
「そうだよ。それだよ」
「やめてしまえばいかがですかな」
「すっきりするなあ」
「じゃ、簡単でしょ」
「やめるとなると面倒が多い」
「はい」
「だから、やめるにもやる気がいる」
「それは面白い構図ですなあ」
「どちらもやる気がいるんだよ」
「詰まりましたなあ」
「感心してる場合か」
「じゃ、今のまま、やる気のない状態で、ぼつぼつやることですなあ」
「やる気がないから、一歩も進んでないぞ」
「詰まりましたなあ」
「両穴の詰まった鼻のようなんだ」
「それは苦しそうですなあ」
「あんた、少しも相談に乗ってくれないじゃないか」
「私もやる気がないのですよ」
「そんなことでいいのか！」
「また、気分が変われば、やる気も変わりましょうよ」
了
2007年11月26日