小説 川崎サイト

 

本命の星

 
 期待していなかったものなのだが、探しているものだったりすることもある。ここにはないだろうと思われるものなので、マークはしていない。
 ただ、探しているものに準ずるものだというのは分かっていた。だから、近いのだが、そこにあるとは思ってもみなかった。準ずるどころか、それそのものだった。
 吉田は意外な気がした。一寸は調べたが、探しているものではなかった。しかし、その可能性を秘めていたことは確か。
 本当に探しているものは少ないし、またそれらしいものは分かっているので、それ以外のところで見付けるのは困難。雲を掴むようなもの。
 吉田の驚きは、それに近いものを何となく選んだのだが、まさかの本命だった。
 これは新たな発見で、意外とそういう見付かり方をするものだと、探し方のコツのようなものを知った。
 逆に、これは本命で、探しているものズバリのものだと確信していたのに、それほどでもなかったこともある。だから本命も当てにならない。
 その確率が高いという程度で、いつもいつも当を射ているわけではない。
 今回は本命に準じる可能性がある程度なので、ドンピシャなものではない。しかし開けてみると、それは確率の問題だった。確率が低いのだが、アタリが入っていたことになる。
 本命ではなく、周辺を狙えということだろうか。本命にはなく、周辺にあると。
 それで吉田は思い出したのだが、本命が徐々に本命らしくなくなり、思っているものと違ってくることだ。
 本命であっても、願っているものが変わる。つまり動いている。変動している。
 だから、今回見付けた本命に準ずるものも、その後の展開で、願っていないものになってしまう可能性もある。
 その新たなものは、まだまだその先があるので、これは期待出来る。ただ、どの時期までかは分からない。
 それが確実にあるという本命の時期は変動するので、違ってくるかもしれない。しかし、それはまだまだ先の話。それよりも本命の星を見付けたようなもの。
 本命になるかもしれないとは最初は思っていなかったが、吉田はその可能性を嗅いでいたのかもしれない。
 さらに分かったことは、本命の星は従来のものから変化して本命になるのではなく、新たに生まれたものの方がその可能性が高いということだ。
 
   了

 

 


2023年3月6日

 

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