小説 川崎サイト

 

ドアを開けると

 
 いつもの日常の中に一寸別のものが混ざっていたりするが、別世界の入口があったりすることはない。
 いつもの道、その先にあるいつもの喫茶店。そのドアを開けると鬼太郎とねずみ男がコーヒーを飲んでいたとか、猟奇王と忍者が隅の席で煙草を吹かしていた、などは当然ない。
 鬼太郎とねずみ男がいる喫茶店。その様子を見ていたのだが、誰も騒がない。それに鬼太郎は漫画そのもの。作り物なのだ。これだけでも騒ぎになるだろう。そんな3Dキャラが現実のテーブル席に収まっているのだから。
 しかし、よく見ると作り物ではない。そういう肉を持った人なのだ。そして動きに不自然なところはない。
 それだけではない。店を出るとき、またドアを開け、外に出たのだが、町の様子が少しおかしい。建物は同じだが、行き交う人が漫画。しかし肉を持っている。だが、それは人の姿ではなく、一目とか、百個ほど目があったりするのもいる。
 オバケの町になっていた。これは漫画であるのだが、実際にそんなことが起これば大変だろう。迂闊に喫茶店のドアを開けられなくなる。何の因果関係もなく、突然そんな状態になるのだから。
 しかし、それがなぜ鬼太郎なのか。ドアを開けた人により、キャラが変わったりする。そしてそのキャラには物語があり、その世界がある。だから外に出た時、その世界になっているのだ。
 当然そんな体験をした人は幻覚を見たことになるが、長いし、規模が大きいと、幻覚では済まされない。
 だから、ただの空想だろう。そして現実では起こらないはずなので、フィクション世界。
 現実とフィクションとの狭間が喫茶店のドア。これはどういう仕掛けになっているのだろう。何処で切り替わるのか。
 その喫茶店、入る客により、中のキャラが変わり、世界観も変わのがミソ。
 中が見えない入口のドア。開けるまでは何があるのかはまだ決まっていなかったりする。
 現実とは別に、そういった架空世界がそっと重なっていたりしそうだ。
 現実でもたまにある。何々のような、とかで。
 
   了


2023年3月11日

 

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