小説 川崎サイト

 

雨の日

 
 三村は雨の降る日の閉塞感のようなものが好きだ。屋内にいる限り、自由自在に動けるのだが、それが外だと濡れる。
 だから屋根のあるところを伝いながらの移動ならいいのだが、それでは限られてしまう。多少の雨なら行動を妨げることはないのだが、それでも雨で閉じ込められているような雰囲気がある。これは具体的な動きでは支障なくても気持ちの上で。
 それで雨がしと降る日は妙に落ち着く。それで、閉じ籠もっているわけではないが、気持ちを狭めている。気を小さくし、狭苦しい考えなどに浸る。元気はないが、穏やか。少し陰が入っている。しっくりとした感じで、これが落ち着く。
 また雨音が聞こえる。これにも調べがあり、何かを奏でている。聞き方によっては色々なリズムとなる。また調べだけではなく、声も聞こえてきそうだ。これは誰かが歌っているような。
 三村は雨音を聞きながら、じっとしているわけではなく、いつもやるような用事をやっている。かなりしおらしく。
 カラッと晴れた日よりも、こういう日の方が三村は好きなようだ。ただ、雨の日ばかりでは困るので、続きすぎる長雨にはうんざりするが。
 だから、雨が好きなわけではない。程度の問題だろう。だから雨の日でもそれなりに過ごすのも悪くない程度。
 また、三村は雨の日は考え方が少し変わるようで、この時に考えたことは暗い。地道、地味と言ってもいいし、リアルと言ってもいい。ただ、そういう発想ばかりではなく、晴れると変わってしまう。
 つまり三村はお天気屋さんなのだ。気象関係の仕事ではない。
 体の中に四季があるのか、または外の自然と同じものが体内にも入っているのか、その影響を受けるのだろう。ただ、意志の力で何とでもなるが、同じことでも雨の日だと意志も重くなる。まるで石を一つ担いでいるように。
 これは気圧とかの圧が違うのかもしれない。
 その日は長く降り続いていた雨がやみ、カラッと晴れた。それで調子が狂ったのか、三村は落ち着かない。晴れのいい天気が続くと、それに慣れてくるのだが、その前にまた雨が来たりする。
 僅かな気持ちの変化、持ち方の違いだが、多少は影響を与えているのだろう。
 
   了
 

  


2023年4月30日

 

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