小説 川崎サイト

 

ある日の朝

 

 起きてみると、曇天。浅香は窓の明るさでそれが分かる。カーテン越しだが、それなりに分かる。
 外に出ると雨が降りそう。そしてそのまま出掛けたのだが降り出してきた。
 まだ小雨だ。昨日まではよく晴れており、活気があった。浅香も元気。天気の勢いに便乗したのだろう。今朝は鬱陶しさに便乗した。乗りたくはなかったが、それが自然な流れ。
 ここで活気を起こしてもいいし、元気を奮い起こしてもいい。だから天気とは関係はないが、何もないのだから、空元気。やはりそれなりのものが前にないと元気も出ない。
 朝方に悪夢を見た。それほど怖い夢ではなかったが、妙な体験をした。別世界での話ではなく、浅香の家の玄関が舞台。見覚えがあるどころかいつもの土間だ。リアルと言うよりもそのもの。
 しかし、土間に妙な塊、よく見ると虫が集まっている。それがウジャウジャおり、大きな黒い塊で、一匹の動物のような動き。
 一匹一匹は小さく、形もよく分からない。だが、集団を崩さず、くっついている。それを箒で掃くと、全体がついてきて、上手くチリトリに入っていく。
 その時、玄関先に誰かがおり、盛んに開けてくれとゴソゴソしている。磨りガラスなのでシルエットは見える。浅香は虫退治中なので、それが終わってからと、待たせたのか、鍵を開けだした。
 その人物、合鍵を持っているのだ。浅香は鍵を誰にも渡していない。だから持っているはずはないのだ。
 しかし、カチッと音がし、ガラッと玄関戸が走りかけた。これはまずいと思い、さっと玄関戸の前まで行ったところで夢が覚めた。
 あまり験の良い夢ではなく、気持ちの悪い夢。そしていやにリアル。しかし、そんな虫の塊がいることなどないし、勝手に鍵を開けて入ってこようとする人などいない。だからリアルであっても、非現実。だから、夢なのだ。
 朝方にその夢で目を覚ましたことになるのだが、それが尾を引いているのか、元気がない。良い夢でも見たのなら、縁起がいいと思い、元気さも違うのだが。それにこの雨。
 そして出掛けてみたものの、調子は良くない。何故か沈んでいる。それに今日はいいことがない。予定にもないし、良い事が起こる計画もない。何もない。
 それも加わり、雨も加わり、いい日とは言えない。
 まあ、そういう日もあるだろうと思いながら、目的地まで急ぐでもなく、ゆっくりでもなく、それなりの歩調で向かった。
 たまには、そういうことで元気とか活気とかやる気とかをお休みしてもいいのだろう。
 ちなみに、先ほどの夢。まったくリアルとは関係しない。だが、このあと、それが出てくるかもしれないが。
 
   了



2023年6月9日

 

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