小説 川崎サイト

 

昼寝

 

 暑い日だった。梅雨の晴れ間だろう。島田は用事で外に出ている。そして作業中。屋外ではなく事務所のようなところ。
 周囲には誰もいない。島田は頼まれたことをここでやる。黙々とそれをやれば良いのだが、早く帰り、戻って昼寝がしたい。
 暑い盛りの時間帯は昼寝をしている。それが今日はできない。しかし、早く戻ればできる。それで、早く済ませたいと思いながら、手を動かすが、急ぐとミスするので、二重手間になり、もっと時間がかかる。だからいつものペースを乱さないように、黙々とやっているのだが、集中できない。
 島田得意の怠け癖が出ている。一度それが出ると、元に戻らない。あと少しで終わる。それが待てない。それでついつい急いでしまった。ただ、ミスは起きなかったので、難なきを得る。優先しているのは昼寝。仕事ではない。
 島田最大の欲望と言えば怠けたいと言うことだろう。これはいつでもできるので、可能な欲望。そして欲望と言うほどのことではないが。
 楽をしたいわけではない。昼寝のように、ゆっくりとしたいのだ。そして、うつらうつらしている状態を好む。寝てしまうと意識も消え。寝ていることも分からないため。
 怠けるというのはしなくてはいけないことをしないこと。しかし、多少はする。まったくしないわけではない。本当にしたくないことは最初からしないので、怠けようはないが。
 やるにはやるが、だらっとやり、本気でやらない。サボるようなものだが、休んでいるわけではない。ズボラというのもある。面倒さと関係する。
 しかし、やることはやる。やっているが怠慢。遅いし、できもよくない。完成度も低い。最低限をクリアしている程度。そこを通れば世間では生きていける。
 だから島田の怠け癖は、身を滅ぼすようなことではなく、世の中に害をもたらすものでもない。
 怠け心。これは隠している。しかし密かに抱いている欲望なのだ。そして実行しているので、実現性もある。
 何かをやることで痛快感を味わうのではなく、しなかったことが痛快なのだ。
 怠慢。これは快感なのだが、人には言えない。
 それで、用事を簡潔にやり遂げ、すぐに家に戻り、昼寝ができた。怠けたいという欲望を見事に果たしたのだが、何もしたくはないというわけではない。
 そしてしばしの昼寝時間に突入。寝入る瞬間が一番幸せなようだ。
 
   了


 


2023年6月20日

 

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