小説 川崎サイト

 

場の揺らぎ

 

 値打ちがあり、興味深いもの。何となく探していたものとの遭遇は、それなりの蓄積がないと、見出しにくい。
 意味を見出すと言うほどではないが、その意味を知っていたかどうかで決まる。知らなければそういうものが漠然とあるだけ。
 そこでは表面的な良し悪しなどが基準になる。しかし意味を知っていればそれに関連するものだと分かっただけで、そのものの中味よりも、その繋がりなどから、値打ちを見出すのだろう。いずれもその人の経験から来ていることが多い。
 始めて何かに触れたとき、右も左も分からないが、それでもそれなりの判断をしている。こちらの方が純粋かもしれない。
 それよりも、経験が長いと場慣れしており、その場の雰囲気を知っている。そこにありそうなものも。そしてそこではないようなものも。
 またそれらは周囲も含まれるので、幽霊が出そうな場のようなもの。幽霊場が出来、それこそ出番。
 そういったことが頭の中で何となく分かる。考えなくても。だから臭いがするとかで。
 ただ、本当の臭いではない。こいつが犯人ではないかというような勘だろう。あいつが臭いとか。
 ただ、そんな刑事ドラマの刑事などはいないだろうが、暗にそれを何となく分かっていたりする。いずれも経験から来ている。そういう例が多いと。
 しかし、例外もあるので、一概には言えないが、臭さの中味までは分からないが、臭いと言うことだけは分かる。
 経験というのは勝手に踏んでいくもので、場数の問題かもしれない。これはキャリアを重ねようとしてやっているわけではなく、いつの間にか蓄積されるのかもしれない。
 何度も使えば使い方に熟していくように、同じことを何度もやっているうちに、身につくのだろう。頭の中だけではなく。
 また、その経験も、無駄な経験をし、そちらへ行っても無駄だと分かるまで、時間がかかるかもしれない。
 しかし、何かありそうだと思っているうちはやめない。ただ、徐々に弱まっていくが。
 何でもなさそうなものに意味を見出す。これは蓄積から来ている。そのものの価値はそれだけで決まるのではなく、そういう含みで決まることがある。
 こういうのは自然にやっていることで、特に秘訣などはない。場数を踏めば詳しくなる程度。そして、今まで見向きもしなかったものにも、何らかの興味がいく。
 当然、今まで一番だったものがそうではなくなることも。
 場数を踏むことで、安定するのではなく、逆にフラフラすることもある。その揺らぎもまたいいのだ。
 
   了



 


2023年6月23日

 

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