小説 川崎サイト

 

厄介

 

 思わぬものが思わぬときに来る。まるでいきなり。これは予想していなかったことで、最初からその予定はない。軽く流す程度で、いつものようなことをいつも通りにやる程度。また時期的にもそれにふさわしい。
 そして、それは一度通過したものなので、内容は分かっている。だからこなし方も。
 だが、以前はそうは思わなかったのだが、意外と凄いことになっていた。知っているはずなのだが、知らなかったかのように。
 もしそうなら、前回のことを記憶に留めているはず。これは凄いものだと。
 確かに少しは覚えていたが、それほど大したことではなかった。だから、注目すべきものではないし、また特別なものではない。ありふれたものの一つ程度。
 凄いことは期待出来ないので、その時期としては、すんなりと行くので、それを選んだのだが、違っていた。
 見落としていたのだろうか。または解釈の違いなのか、認識が変わったのか、凄いものに見えてきたのだ。
 気楽に接したのだが、そうではなかった。
「何を訳の分からない独白をやっておるのですか、竹田君」
「いや、一寸した間違いをしまして。今、その時期ではないのに、出てきたのです。厄介なものが」
「悪いことですか」
「厄介なほど良い事です」
「厄介がいいと、それは妙」
「喜ばしいことですが、その時期じゃないので、厄介でした」
「時期によって良くなったり悪くなったりするのですかな」
「接するタイミングだと思います。今はその時ではないという頭でいましたから」
「まあ、何でもよろしい。細かいことは」
「伝わりましたか」
「似たようなことが他でもあるでしょ。似たパターンです」
「でも、何故その時なのか、分かりません。偶然だと思うのですが、今、その時じゃなかったのです」
「それで厄介なものに変わったのですか」
「準備ができてませんでした。そのものが厄介なのではなく、タイミング的に厄介なのです」
「竹田君の話の方が厄介だ」
「はい」
「流れというのがあるのだろうねえ。しかし、その流れ、自分で作っているのですが、流れが偶然変わるようなこともあります」
「今回が、そうでした」
「しかし、それも竹田君が作った偶然の流れなのですよ」
「でも、どう見ても偶然でした」
「まあ、作った本人もそこまで計算できていなかったのでしょうねえ」
「はい、ただの大まかな流れなので」
「それで、意外でしたか」
「最初は、意外でしたが、その可能性もあるのかも」
「鴨が飛びましたか」
「でも、いいのを発見して、良かったです。期待していなかったのを得られましたから」
「じゃ、厄介じゃなかった。喜ばしいことだったのですね」
「ああ、そうですねえ」
「もう少し話を整理してから喋りなさい」
「ああ、はい」
 
   了


 


2023年7月7日

 

小説 川崎サイト