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内界の輪
村田は珍しく、その日、用事があるので、出掛けていた。滅多にないことだが、以前はよくあった。
用事で出掛けるというのは普通にあることで、出掛けるような用事が全くない方が、珍しいのだが、村田は最近少なく、またそれは年々減っている。
ではその間、何をしているのかというと、決まった用事をこなしている。これも用事だが、毎日のこと。それなりに忙しく、休む時間がないほど。
しかし、良く考えると、一日中休みなのだが、その過ごし方が決まっているだけ。
別に村田が決めたわけではなく、ほぼ習慣的な動き。ただ、特別な日は少ない。
日々の用事で出掛けることもあるのだが、ずっと出っぱなしではなく、すぐに戻ってくる。買い物などがそうだし、散歩などもそう。だが、散歩は用事ではなく、出掛けるとまではいかない。ただの一日の過ごし方。
だから、日々同じことの繰り返しなので、同じようなものを見たり、同じようなことをやっている。
ところがそれとは違う用事がたまに入る。これはかなりバランスを崩す。日々のスケジュールが狂うためだ。
ただ、それらの用事を先にしたり、あとでしたり、またやらなくても良かったりするのだが、要するに予定が狂い、勘が狂う。まるで日常の結界が破られたかのように。
その日はそんな感じの用事が入ったので、その時間になると出かけないといけない。そうすると、その時間にやっていたことができなくなる。これで潰され、消されてしまう。
しかし、大したことをやっているわけではないので、被害はないが。
それで、出先で用事をしているとき、この時間、いつもなら何をして過ごしている最中かと思ったりする。昼寝中かもしれない。
いつもの過ごし方よりも、出先での用事の方が変化があり、刺激は強いのだが、いつもの用事を犠牲にしている。
しかし、出先での用事の方が大事だし、その日、その時間帯でないと駄目なので、いつでもできるような日々のことは後回しにしてもいい。終わってからやればいいのだ。
しかし、終わってからでは時間が違う。また、その日はどうしても時間がないので、できないこともあり、それは翌日に回す。すると、翌日にもやる用事と重なるので、同じことを二回やるか、倍の時間を掛けないといけない。一回ならできることでも、二回となると、普段ないことなので、これがしんどい。
つまり、ちょっとした用事で出掛けると、そのしわ寄せが後日まで続く。尾を引くのだ。そのため、ちょっとした用事で出掛けただけだが、日常が乱される。
また、特別な用事で出掛け場合、いつものように出掛けていた場所へ行けなくなる。これは時間がかち合うためだ。
日々決まったことだけをする。これが安定しているのだが、その良さは、ちょと乱されたときに感じたりする。
日々の中での順番、村田の内界の輪だ。
了
2023年7月11日