小説 川崎サイト

 

分割する

 

 しばらく続く用事があると、面倒だ。何かそれで時間が縛られる。時間を使わないと、用事ができない。用事をやると時間をそこで使うので、他のことができない。
 しかし、その他のこととは用事と言うほどではなく、やらなくてもいいこと。それが中断しても困らないのだが、ペースが狂う。
 飛び込みの用事は普段にはない用事で、いつもやっていることではない。似たようなものだが、頼まれ事だと相手がおり、決められた日までにやらないといけない。そこから逆算すると、日にどれぐらいの時間を割けばいいのかが分かる。急げば一日で終わることでも、それでは丸一日潰れてしまい、他のことができない。
 だから、いつもの用事の間に少し挟む程度。これなら時間はそれほどかからない。一日でできることを一週間ほど引き延ばす。延時間は同じなので、別に時間を掛けてやるわけではない。
 岸田は最近、その方法を使っている。日々の負担が少ないこと、あっという間に終わってしまう。
 しかし、一日で片付くことが一週間続くのだから、ずっと何かを背負っているようなもの。さっさと済ませた方が楽なのだが、そのプレッシャーがあると、張りが出来る。少しでもやったことで、それなりに充実する。
 山をならし、平坦にして、引き延ばしているだけなので盛り上がりがない。盛りが低いのだ。その代わり、あまり気を張らないで、平常心でできる。興奮しないで済む。熱中する前に一日分は終わってしまう。
 結局集中力は十分か二十分以内までだろう。もっと言えば、最初の五分ほどで決まってしまう。
 ここは凄い集中力がある。それを毎回使えるのだから、一日でやってしまうよりも、丁寧なのかもしれない。それだけ注意深くやっているのだから。
 そして、少ない時間でも、済ますと、ほっとし、満足感、充実感を少しは得られる。さらに全てを終わらせた最後の日は、肩の荷が全部落ち。スッキリする。
 それで岸田はこの方法を続けているのだが、意外とこの分割、悪くはないようだ。
 
   了

 
 


2023年8月13日

 

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