小説 川崎サイト

 

後継者

 

 期待していたものの力が衰え、期待はしているが、もうあまり期待していないことがある。しかし、まだしている。それに続く後継者のようものが出ないため。その差はあまりないのだが、初期のうちはそんなもの。それよりも、その後、どのように変化していくかだ。
 竹内の期待は他の人とは違うが、多くの人も、期待の中身は同じだと思われる。だから竹内一人が妙なところに期待しているわけではない。
 その時期、後継者になりそうなものが現れた。これは以前からいるのだが、方向がまだ分からなかった。台風の進路のようなもので、予測はできるが、そこへ向かうかどうかは分からない。
 また、その後継者、最初の頃よりも大人しくなっており、もうその先へは行かないのかと思うほど。それが今回、そうではなく、さらに進むことが何となく分かった。
 他に後継者候補はいるが、この後継者が一番近く、その可能性が高い。そのダメ押しのように、今回の台風は勢いがあるという感じ。勢力を盛り返したようだ。
 竹内はそれで機嫌がいい。期待できるためだ。しかし友人の朝永は期待などしない方がいいと偉そうなことを言う。まるで悟ったかのように。
 期待するので、落胆する。という論理だ。だが竹内はそうは思わない。スカで終わっても、期待している間は楽しいではないか。それに気分もいいし、先々の楽しみができる。それを思っている間中楽しいのではないかと。
 落胆したとしても一瞬だろう。期待しないで接した場合、満足を得ても、これも一瞬で終わる。それよりも期待して待つ時間や日々は長い。こちらの方が得ではないか。と朝永に反論する。
 それ以前に期待できるものを期待しないで無視することなどできるだろうか。そんな冷めた感情のままいられるとすれば、あまり興味がない問題だろう。どうでもいいような。
 それでも朝永は、期待には落胆が付きまとうので、やめた方がいい。もっと素直な気持ちで接するのが正しい。憶測などせずに、と言う。
 これは難しい話で、予測したり、期待したり、憶測したりするもの。それを止める方が難しい。
 それに今回、竹内は後継者を見付けたので、機嫌がいいし、元気になった。簡単なことで、そうなるのだから、努力はいらない。
 ただ、探し求める手間暇はあるが、それは期待できるためだ。見付ければ喜ばしい。別に何かが起こったわけではない。竹内とは関係のないところでの現象。
 しかし、何処かで共振し、共鳴している。これは勝手な調べなのだが、影響を受けるのは確か。
 そして、その期待のお陰で、気分がいい。期待できなくなるとがっかりするが。
 どちらにしても後継者が現れると期待できるので、喜ばしい。
 朝永は、それに対し、しつこく反論を続けたが、きっとそれで竹内の考えが改まるのを期待しているのだろう。
 
   了


 
 
 


2023年8月19日

 

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