小説 川崎サイト

 

道草

 

 道が閉ざされていたり、切れていたり、通れなくなっていると困る。
 いつものように先へと進めない。道は繋がっており、これまで通ってきた道の先にあり、さらにその先があるので、これまでのことが無駄になったりしそうだ。
 また、これまでの道は準備のための道で、それを果たすには次の道に入らないとできない。それが閉ざされていたり、行けないとなると、困る。
 吉田にとってのその道は具体的に切れてしまった。別の方法はない。すると計画が狂う。台無しになるかもしれないが、それほど凄い準備ではないので、なくてもいいのだが、やはりないと困る。
 目的を失い、彷徨うことになるのだが、待てば修復され、また通れるようになるかもしれない。それはまだ分からない。しかし、その期間が長いと、別の方法を考える必要がある。
 吉田は、過去にもそれを考えていたことがある。やはり今回と同じで、道が閉ざされ、通れなくなったのだ。その時はしばらく待てば回復したが。
 だが、その時、いつもの道で良いのだろうかと思うこともあり、道は通れ、先へは行けるのだが、今までに比べれば一寸辛くなっていた。
 その辛さはその道を通るからだ。そのため、封鎖され、切られてしまったとき、意外とほっとした。もう通らなくても良いので。
 しかし本来の目的は果たせない。すると、今度は本来を変えればいいのではないかと思うようになる。そんなことができるのだろうかと、疑問に思ったが、意外と新鮮。
 別の道に乗り換えれば、それが可能で、今までの道よりも拡がりがあるかもしれない。ただ、本来のものではない。
 だから本来を問い直せばいいのだが、全体を変えるようなことになる。そしてそれが本来のものに劣っていたりすると、やはり苦しい。
 しかし、本来のものも、最近苦しくなっている。これはいいタイミングではないかと吉田は思う。そういう時期に来ているのかもしれない。
 道が消え、なくなり、行けなくなったのなら、別の道を探す。吉田は一度探したことがあるので、何となく手掛かりはある。
 道が閉ざされ、困ったことになったが、それでも目的地へ向かおうとしている。その道はいつも通る道で、いつか来た道で、まだ見ぬ道ではない。
 そうなると、吉田は何も決められないし、動き方も分からない。できることと言えば道草を食うだけのことだろう。本来の目的ではないが、その道草、悪くはなく一寸新鮮なが気した。
 
   了

 
 


2023年9月6日

 

小説 川崎サイト