倒れる
川崎ゆきお
何度倒されても、何度もアタックする人がいる。
倒れても大したダメージではなく、またリスクも少ないのなら、このパターンを続けるのも悪くはない。
倒されるのを恐れると、勝ち取れるものも少ない。
「いやー、ダメージが残るでしょう？」
「大したダメージじゃないですよ。何度も出直すのは面倒ですがね」
「精神的ダメージが大きいのではないですか」
「その代わり、収穫もあるわけですよ」
「収穫は欲しいですね。でもダメージを受けるのは嫌ですねえ」
「精神的ダメージって、気持ちの問題でしょ」
「その気持ちが大事なんじゃないですか。何度も倒れると滅入りますよ。それに倒れることは、あまりよくないですよ」
「しかし、倒れない人なんていないですよ。頑丈そうでも、多くのダメージを受けると耐え切れなくなり、倒れますよ」
「じゃ、逃げるのはどうでしょうか」
「最初から逃げていては収穫もありませんよ」
「そうですねえ」
「倒れても、またアタックできる人はタフなんでしょうか？」
「めげずに何度も起き上がっているだけですよ」
「その、めげない精神力がタフなんでしょうね」
「結局そういうことです」
「じゃあ、倒れることは気にしなくてもいいのですね」
「そうそう、倒れるものなんですよ」
「倒れるのはいけないことと思っていました。それは弱いからだと」
「弱くても強くても倒れますよ」
「結局は倒れるのですね」
「そうです。倒れにくい方法はあるでしょうが、完璧じゃない。強ければ過信し、深追いして倒される。また、弱ければ、無理をしない。まあ、その程度の違いですよ。どちらも倒れるのですよ」
「精神的ダメージは、まあ、それで何とかなるとしても、リスクはありませんか？」
「落伍する危険性があります」
「それは大きなリスクじゃないですか」
「ある限界点までなら大丈夫ですよ」
「身を削る思いですねえ」
「どうです。辞めますか？」
「やってみます。倒れてもいいのなら、できそうです」
「はい、励んでください」
了
2007年12月21日