小説 川崎サイト

 

ランダム

 

 吉田は待っていたのだが、何を持っていたのだろうか。
 それは時期を待っていた。その時期はいつか分からない。近いうちだが、それほど早くはない。遅いかもしれないが、それほど先ではない。ある範囲内だが、それも短くなったり遅くなったりする。
 そして何を待っていたのか。それは分かっているが、なかなか盛り上がらない。まだまだ今ではないと。
 ただ、それは今であっても困らない。だから待つ必要はないが、きっかけがない。改まってしまうため、プレーシャーが来る。そして重く感じる。
 それで待つことにしたというよりも避けた。狙っているものを。
 そしてランダムに任せた。無作為に。
 しかし、これは偶然のタイミングで待つので、いつ来るのか分からないが、今すぐ狙っているもだと待たなくてもいいが、今度は吉田側の盛り上がりがないとできないので、それを待つことになる。
 二つ待つことになる。力士の立ち合いのようなもので、両者の息が合わないとガシッといかない。
 それで待たなくてもすむものを避けて、別の大きなところから流れてくるものを待った。これは大きな川のようなもので、何が流れてくるのかは分からない。
 しかし流しソーメンのように、流すものは吉田が用意しているので、その範囲内。
 流れてくる順番が違うだけのランダム。ただ、上流で吉田が流したものだが、もう忘れているものもある。古いのも新しいもの、またレベルやランク違いもごっちゃなので、何か来るのかは分からない。
 要するに吉田がランダムに仕掛けたようなもの。ただ吉田が知らないものは入っていない。だが、詳しくは知らないものも多い。そのため出たとこ勝負で、大概は意にそぐわないもの。
 しかし、それでもタイミングがよければ何とかなる。これは吉田のそのときの気分で決まる。その気分、吉田の今を表している。当然昨日の今と今日の今とでは違うので、流れてきたものの評価も違う。
 流れてきたものを、そのまま見送ったりすることが多い。ランダムなので確率が悪いのだ。そして評価もそのときにより変わるので、同じものでも見送ってしまったりする。
 しかし、狙ってまでは選ばないものと同等のものが流れてくることがある。これは待っていたものだが、本来なら選ばないもの。
 しかし、流れてきたのだから仕方がない。狙っているものは身構えないといけないほどプレッシャーも大きい。
 だが、ランダムに流れてきたものは最初のプレッシャーがない。サッと入ってくるのだ。これは見送ってもいいのだが、そのとき吉田に盛り上がりがあるのなら受け入れやすい。
 だから二つのことを待っていることになる。一つは吉田の盛り上がりや気分。もう一つは予定にあるがプレッシャーの高いもの。
 流しソーメンの中に、プレッシャーがあるものをこっそりと入れているようなものだが、狙ってはいないが、それと同等のものも入っている。同等かどうかはあくまでも予想。
 吉田はこの方法を偶然発見した。しかし、それを説明しても、何を言っているのか分からないらしい。

   了



2023年11月8日

 

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