タコ焼と占い
川崎ゆきお
毎晩のようにタコ焼屋の車が止まっている場所に、占い師がテーブルを出した。
その占い師は、この町角が始めてのようだった。
占い師がテーブルを出す通りは他にもあり、駅と繁華街を結ぶ細い道が指定席だ。
夜になるとテーブルの間隔を開けながら、場所をとっている。
その通りの占い師たちは顔見知りのようだ。
新参者の占い師は、場所から弾かれたのか、大通りの歩道にテーブルを出した。その場所がタコ焼屋の定位置だとも知らずに。
タコ焼の車が来たとしても、少し位置を変えればいい話だが、横断歩道や、駐車場の入り口などがあるため、出せる場所はピンポイントなのだ。
その占い師が歩道のピンポイントを見つけたのは流石だが、タコ焼屋の場所であることまでは予測できない。これは占いではなく、毎晩その前を通っている人なら分かることだ。
そしてタコ焼屋の車がやって来た。この界隈ではお馴染みのおじさんだ。会社の重役のように貫禄と品があり、言葉も丁寧だ。
タコ焼屋としては異色の雰囲気を醸し出している。
おじさんはその場所に車を乗り入れようとバックで入っていった。
「なんばすっとですか」
占い師が大声で叫んだ。
おじさんはやっと気づき、ブレーキを踏んだ。
「ここは、僕の場所ですよ」
「そうなんですか」
車はまだ黄疸歩道にタイヤを乗せていた。
「車を止めたいのですがね。ちょっと移動してもらえませんか」
移動すると駐車場の入り口に被ってしまう。
「それはできましぇん」
「他でやられてはどうですか」
「ここは駅から遠いけど人通があるとです」
「だから、僕も店を出しているんですよ」
「先に私が出した」
「ああ、でも僕がいつも出す場所なので、遠慮してもらえませんか」
占いテーブルも車も動かない。
「じゃ、どうです。車の真横にきてもらえませんか。並ぶような感じならはみ出さないから」
「はーい。分かりました」
無事解決し、おじさんはタコ焼を焼き出した。
相乗効果があるのか、長くこの組み合わせは続いたようだ。
了
2007年12月27日