小説 川崎サイト

 

面接試験

 

 四次まで行き、やっと面接となる。これで終わる。ここで最終決定。だから五次。六次はない。
 しかし敗者復活戦のようなのはあるかもしれないが、ただの面接。誰かと戦い、勝敗を決めるわけではない。ただ田村にとり、それは戦い。
 直接戦わないが、ライバルがいるはず。四次まで田村は勝ち続けたようなもの。ただ、トーナメント戦とは違い、一次の人たちの多くが四次まで来ている可能性もある。減っていなければ、面接が勝負。
 ここで勝負がつくのかもしれない。ただ、採用人数は知らされていないし、応募した人の数も知らない。
 もしかすると面接だけをやる仕事の会社かもしれない。面接が最大の業務で、年中面接をやっているとか。請負会社ではなく。
 それで面接をクリアし、受かっても、はい、そこまでよとなるかもしれない。採用しましたというのがフィニッシュで、その先はない。
 その後、仕事などなかったりしそうだが、あるとすれば、今度は面接官になることだ。ビルの前で案内人として立っている役とか。
 しかし、四次まであるのだが、ほとんど書類による審査。提出書類も結構あったし、アンケートもあったし、文章などもあった。そんな規模の会社だとは思えないのだが、大きな所と繋がっているのかもしれない。
 それで田村の面接が始まった。
 よくあるような質問ばかりで、形だけではないかと思えるほど。ただ、たまに妙な質問が入る。これは例題にはない。
 田村は面接での受け答え本を何冊か読んでいるので、大概のことは模範解答。よくあるような答え方になるが、無難なところだろう。
 そして最後の方で、自分自身について語ってくださいと来た。これも良くあるので、それなりに答えた。
 すると、もっと細かく説明してくださいと突っ込まれた。
 田村は私は人間です。などと言うところからさすがに説明していないが。どの程度の細かさで良いのかが分からない。
 それで、子供の頃のエピーソードを話した。実はこれも面接本にあるのだ。
 面接官は五人もいた。年寄りから若いのまで。この五人の合意で採用不採用が決まるのかもしれない。またはさらにその上の人がいて、五人の意見を参考に決めるのか。
 面接は一応型どおり終わった。
 面接官たちの表情を見ると、まずまず。しかし、その印象と実際とは違う。
 一週間後、通知が来た。
 不採用だった。
 田村はホッとした。実は会社に行きたくなかったのだ。
 
   了


 


2023年12月13日

 

小説 川崎サイト