小説 川崎サイト

 

寝起き占い

 

 さて、今日は何だろう。引田は朝、目覚めるたびにそれを思う。しかし、その問いかけの前に浮かんでくる。
 これが今日のハイライト。トップかもしれない。真っ先に出てくるので、思い出して出てきたことではない。最初に感じたことだろうか。
 これはパソコン起動後最初に常駐したり、勝手に立ち上がってくるプログラムのようなもの。最初から仕込まれているのだが、ここが違うところ。
 何が仕込まれているのかは分からない。今日は何だったのかと思い出すわけではなく、勝手に浮かび上がる。
 それは何処で仕掛けられたのだろうか。起きたとき、すぐではない。まずは体が起動する。動くかどうかを試すわけではないが。
 そして意識がはっきりとしたところで、それが浮かんでくる。朝の用事とかの目先のことではなく。また布団からの出方とか、立ち上がり方とかではなく。そんなものはよほど身体がおかしくなったとき、気にする程度。
 多いのは今日の予定。だから昨日に仕込んだものだろう。用事にもよるが、それも含めて何か気になることが浮かび上がる。これは日替わりだ。
 ただ、今朝は晴れているようだとかなら平和なもの。特に何も浮かばないので。
 大した用事もなく、気がかりもないような感じ。この状態を引田は好む。分かりやすいし、感想を述べているだけで、それほど影響のあることではないが、雨だと、一寸影響は出るが深刻な話ではない。
 この寝起き早々浮かんでくるもの。これは昨日からの引き継ぎかもしれない。当然引田自身の引き継ぎも。
 寝ている間は中断し、引田も引田を忘れている。ただ夢の中で違った引田が活躍しているかもしれないが。しかし、それは夢の中の引田なので、起きたときのいつもの引田とは別物。夢の中では自分だと思っているが。
 さて、朝一番に思い浮かんでくるもの。それはすぐに溶けてしまうほど、何でもないことだったりすることがある。重大事ではなく。
 そんなことを思っていたのかと、可愛らしく思えるほどつまらないことだったりとか。
 しかし、ずっと用事が続いており、それが圧になっているとき、それが浮かびやすい。当然だろう。寝ても覚めても思い出すようなこと。これはあるだろう。
 これは夢占いではない。夢から覚め、起き時、最初に立ち現れるものなので、起動占いかもしれない。寝起き占いでもいい。
 寝起きのすがすがしさとは、ほとんど何も浮かんでこないときだろう。それこそ白紙。何もないところから一日が始まるような。しかし起きたときから白紙というのはないが。
 最初に思い浮かぶものが終わったあと、今度は作為的に思い出そうとする番だ。ああ、今日は一寸面倒なことがあるとか、良いことがあるとか。
 主に悪いことの方を思いつきやすい。楽しいことはそのままでもいいので。
 しかし、寝起き浮かんだり、思ったりするようなことは、しばらくすると整頓される。より現実的にこなせるように。すると、消えてしまうことが多い。
 
   了


 


2024年1月20日

 

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