小説 川崎サイト

 

自動筋書き

 

 ある一連の出来事が終わったとき、振り返ってみると、そういう形になるのか、そういう筋書きになるのかと人ごとのように思うことがある。
 とっかかりはさほどではなく、これでは駄目かもしれないと思いながら進めていくと、それなりに興味深い展開となっていく。
 しかし、これで目的が叶うとは思えないが、山あり谷ありで、ストレートに上手くいくはずはない。それに駄目なら元々。それほど期待していない。
 この一連の流れ、作田が作ったわけではない。作田なので田を作るわけではなく、自動的な選択の流れに近い。順番は決まっておらず、適当に並べたものを実行しているだけ。
 しかし、まるでストーリーがあるように筋書きができているように感じてしまう。これはあとで分かったことで、そのときは気付いていない。順番にやっているだけで、選んでいない。変更もしていない。
 また、あえて中止するようなこともなく、なぜこれが挟まれているのかも不明なまま。これも繋がりのないようなカードだが。導火線になっていることが分かる。これがあるので。
 誰が並べたのだろう。作田ではない。そしてその筋書き、作田が作ったよりも巧みで、作田には作れないような筋書き。
 そういうものに筋書きなどあるのかどうかは分かりにくいが、上手くできているように思えた。脈略も何もないものから選んだわけではなく、それなりのものをぶち込んだ箱のようなものから、くじを引くように一枚引き、あとは自動的に並ぶ。そういう仕掛けだ。たとえば日付順とか、名前順とか、長い順とか短い順とかで。
 だから関連性があるので、完全にランダムではない。その秘密は、その箱にある。
 そこに入れるかどうかを決めるのは作田。だから作田はそこで決めているのだ。ただ箱は大きく、何を入れたのかが分からないものもあり、こんなものも入れていたのかと思うものとか、古すぎて忘れているものもある。
 だからブラックボックスに近い。ただその全ては何処かで作田がチェックし、入れているので、場違いなものはないが。
 だから作田にも把握しきれない作田の世界が、その箱の中にある。
 問題はその並び方なのだ。または順番。これはシナリオ的に作ろうと思うと難しい。だからブラックボックス、ランダム性に頼ることになる。これなら分け隔てなく飛び出してくる。下手に選ぶよりも。
 そしてたまに筋書きがあったような順番になっていたりする。これは偶然だろうが、作れない筋だ。また、そういう筋を作りたかったというものに近い。
 ただその方法、毎回上手くいくとは限らない。上手くいかない時は、そういうのを挟むことで、退屈なシーンをあえてやっているようなもの。
 だが、偶然生まれた筋書き。それは本当の筋書きだろうか。上手くできた物語なのだが、作田がそう見出しているだけかもしれない。
 
   了

 


2024年1月24日

 

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