小説 川崎サイト

 

出来レース

 

 不思議と揃うものが揃い、そうなるように決まったいたかのようなことが起こると薄気味悪い。
 これは良いことでも悪いことでも。しかし、それが起こったとき、それまでのことを思い出し、アレがこうで、コレがそうでと、その繋がりが見えてくる。
 しかし、これは勝手に話を結びつけたのかもしれない。関連しそうなことを選び取り、辻褄が合うようにこしらえた。かなりの戯作家だったりする。
 そのため、関係しそうなエピソードは他でも使えたりする。今度は別の意味でのチャプターとして。
 上田はそう思うのだが、既にできあがっていた出来レースを見ているだけではないかと、そちらの方も考える。
 しかし、これは怖い話だろう。なぜなら、それが出来レースなのではないかと考えることも出来レースの中に含まれており、そう思うこともまた決まっており、決まっているのだと思うことも決まっていたりすると、切りがなくなるからだ。何処かで終わらないと。
 悪いことが起こったときも、それはいいことが起こるために必要なエピソードだったという考え方も知っているが、そう思うことで、苦しさも紛らす程度。
 認識の仕方で扱い方が違うようなものだが、起こった事実はそれほど違ったものではなく、そのままのことがそのまま起こっているだけ。
 そこに何か救いが欲しいとかで、そんなことを思いつく。その方が気が楽になるのなら、軽減策としてはいいだろう。
 しかし、予想できないようなことが突然起こり、その原因などが思いつかないとき、エピーソードだけが単独で来る。以前からの繋がりが見えない場合だ。これは何とか繋げたいので、探したりする。
 上田は過去に解決が難しく、何ともならないことがあった。それで頑張ったのだが、果たせなかった。これはかなり無理なことだったのだろう。
 しかし、あるところからサッと解決した。上田が仕掛けたり工夫したわけではない。その中身は簡単なことで不思議なことではない。しかし念願の宿題が終わっていたのだ。何もしなくても、勝手に。
 その方法が神秘的なのではない。普通の方法で、ありふれた話。
 無理なことでも粘っておれば、何とかなったようなものだが、上田の手柄ではない。自然にその時期が来て、それが起こり、間接的に上田の宿題を済ませてくれたようなもの。
 これは果たして出来レースだろうか。それにしては長いレースで、その間、苦しい思いをした。しかし、それまた一つのレースで、レースはまだ続いているのだ。しかもレースは一つではなく複数ある。
 出来レースであったのかどうかはまだ決めるわけにはいかない。続いていそうなので。
 そして出来レースよりも出来損ないの出来の悪いレースの方が気味悪さがなくていいのかもしれない。
 
   了


2024年2月16日

 

小説 川崎サイト