小説 川崎サイト

 

探し物

 

「探しているものが見つかったよ。苦労して探さなくても簡単なところにあった。あっけなくね」
「それはよかったねえ」
「ずっと見張っていたんだ。チェックしてた。しかしいつ見ても同じようなもので、あまり変化がないんだ。しかし、それがある確率は高いんだ」
「それで見つかったのかい」
「そうなんだ。今回はあまり待たなかった。もっと遅いと思っていたんだが、それが早かった。まさかすぐに出るとはね」
「じゃ、もう待たなくてもいいんだ」
「いや、それを待つのが楽しかったんだ」
「あ、そう」
「だから早い目に出てしまうと、待つべきものがなくなってしまう。探さなくてもいいけどね」
「どうしてそんなに早く出たんだろう」
「さあ、それは知らない。しかも立て続けに出た。まだ出ていないものもあるのだが、それよりも先に出ているんだ」
「あ、そう」
「興味なさそうだね」
「探しているものは人によって違うからさ」
「そうだね。僕は興味津々だけど、君はは無関心」
「関心はあるけど、それじゃない」
「そういうことだね。だから探し物が見つかったんだけど、喜んだのは僕だけかもしれないなあ」
「固有すぎるんだよ」
「いや、探している人は結構多いと思うけど、その絶対数は少ない方だね。一般的じゃない」
「でも、見つかってよかったねえ」
「ここで運を使いすぎた。偶然か必然かは知らないけど、続きすぎた。ほぼ同時期に来たからね。こんなことは滅多に起こらないから、もう次は当分ないよ」
「それでもまだ探すのかい」
「まだ、見つかっていないのもあるしね。これはいつか出るが、出ないかもしれない。ずっと待ってるけど」
「待つのが楽しみなんだからいいじゃない」
「ある日突然出たというのもあるしね。予想できないからいい」
「僕も待っているのはあるけど、探しにまで行かないなあ。来たときでいい」
「待ち人来たらずのままってこともあるねえ」
「待っていないから、落胆もないさ」
「でも密かに待っている」
「探さないけどね」
「どっちがいいんだろう」
「さあ、本人の性分次第でしょ」
「僕は待っているのになかなか来ないときは、どうなっているのか、少しは調べたりする。まあ、調べようがないものもあるがね」
「でも発見したときは嬉しいでしょ」
「懸命に探したんだから、その成果を味わえる」
「でも落胆の方が多いんでしょ。やはりまだかと」
「慣れてくると、来ていなくて当たり前となるんで落胆とまではいかない。それで普通という感じ」
「僕も君のようにこまめに探しに行こうかな」
「それなりに楽しいよ」
「そうだね」
 
   了





2024年3月30日

 

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