小説 川崎サイト

 

完璧

 

「これぞまさにど真ん中、完璧だと思えるものがあるのですがね。完璧すぎて息が詰まります」
「完全に壁に囲まれているわけですからね」
「だから、窮屈に感じます」
「でも完璧というのは防御のことでしょ。その城内は安全とか」
「そうなんですか。私は完成度が高いもので、欠点のないものがそうだと思っています」
「何でもいいですよ」
「それで、続きなのですが、少しは欠点が欲しい」
「完璧すぎることが欠点でしょ」
「はい、壁の一部が破損しているとか、弱いところがあるとか」
「じゃ、完璧じゃありませんねえ」
「あ、そうですなあ。だから、完璧の手前程度が馴染みやすいです」
「馴染む?」
「親しめると言うことです。弱点がある方が」
「じゃ、完璧と言えないので、危ないですよ」
「もっと不完全なものはいくらであります。そこから考えればほぼ完璧」
「しかし、完璧すぎるとそれはそれでいけないと」
「愛想がありません」
「愛想?」
「はい」
「そんなものが必要ですか」
「息抜きなようなもの」
「息抜き?」
「はい」
「そんなものが必要ですか」
「その方が趣がある」
「趣?」
「はい」
「そんなものが必要ですか」
「まあ、なくてもいいのですがね。ある方が好ましい。ところが完璧なものはそれも埋めてしまう」
「趣もある完璧さじゃないのですね」
「それを入れると緩くなり、完璧ではなくなります」
「それはただの趣味の問題ですか」
「そうです。私の好みの問題です」
「じゃ、あなたにとって完璧なら、それでいいんじゃないですか」
「そうです。完璧さは緩みますが、趣が入る。これが私にとっての完璧です」
「はい、お好きなように」
「はい、そうします」
 
   了



2024年4月18日

 

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