小説 川崎サイト

 

変化

 

 普段とは少し違うことがあると、その後の展開が変わってくるわけではないが、少しは変化する。ある変化がある変化をもたらすようなもの。
 しかし、一寸した変化なら、しばらくすると普段通りになる。普段からやっていることの続きへ。
 しかし、ある変化により、普段見えなかった断面のようなものが見えたりする。それは常にあったのだが、その方角から見ていなかったり、または気付かなかっり。
 これも大したことではなく、池田に影響与えることではないが、少しは気になる。
 池田が普段気にしていなかったこと、これは内も外もだが、それがインしてくる感じ。スッと扉が開き、中を垣間見ることができる。
 この建物の裏側はこうなっていたのか程度のことで、特に問題が発生するわけではない。
 しかし、通り一遍のものしか見ていなかったことを池田は感じる。必要だから見るというのもあるが、ほとんどの事柄は関係しなければ見ても見なくても同じこと。
 ただ少しは知識にはなるかもしれないが、断片的な知識では、ただの印象で終わってしまう。しかも誤解やデマだったりもする。それ以上調べなければ。
 池田が見えているものは風景を眺めている程度で、実際に遠くにある樹木の下まで行くわけではない。そういう木がある程度の知識。そして何の木なのかは知らないし、またどうしてそこにあるのかも知らない。
 実際の現実にはそこにもいろいろと事情のようなものが込められているのだろう。当然そんな風景の中の一本の木など、それほど注目するほどのことではなく、あるという程度。
 しかし、その日、池田はひょんな事で、その木に近づいていった。これは道が工事中で迂回しなければいけなかったため。変化と言えば変化だ。
 普段の道から逸れるが右側の道に入ったのだが、その正面にあの木がある。少し近づいた感じだ。しかし左へ行く予定なので、まっすぐ行くと外れる。
 迂回のため、一度右へ出て、すぐに左へ入らないと方角が九十度違ってしまう。普段ならその木は右に見えている。今は道を曲がったので、正面に見える。そして別の筋に入ればまた右側に見える。
 しかし池田はその木が気になった。目的の方角とは違うので、遠回りと言うよりもただの寄り道。北へ行かないといけないのに東へ向かっている。
 しかし、真正面に見えていた木だが、その道はすぐに終わり、左右に分かれる。そこまで来ると、もう木は建物に邪魔され、見えなくなる。
 これで視界から消えたので、もう木のことなど忘れたかのように我に返り、分かれ道で北側を選んだ。南側を選ぶと、木に近づける道があるかもしれないが、南なら完全に戻ることになる。池田は南から北へ向かっているので。
 それで長い迂回路になったが、いつもの道に戻ることができた。
 何かの変化で、普段は気にも留めなかったものが気になりだしたりするのだろうか。
 または池田は一寸した変化を楽しみたかったのかもしれない。
 
   了


2024年4月22日

 

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