小説 川崎サイト

 

冴えない日ほど

 

 今日は天気も悪いし冴えない日なので、高田は大人しく、静かにしておこうと思った。
 いつも、はしゃいでいるわけではないが、こんな日は動いてもろくなことはない。気持ちも落ちているし、低気圧で頭も痛い。まさにろくな日ではない。
 では七の日があるわけではないが、ラッキーナンバーの七が来るかもしれない。しかし、ろくな日ではないので、その期待もない。
 仕事も上手くいっておらず、何とかならないものかと日々考えているが、思うようにはいかない。世の中そんなもので、調子のいい日が続くことがおかしいほど。山あり谷ありと高田は諦めムードにはなっているが、たまには良いこともある。
 その、たまが、そのあと来た。しかも二つも三つも。これはあり得ない話。いいことなどたまにあればいいほどで、あとは雑魚しか釣れないような日。
 そんな雑魚の中でも上等な雑魚が釣れる程度。それでも少しは小ましなので、それで喜ぶしかない。しかし雑魚は雑魚。タイやラメではない。
 松竹梅の松ばかり。山へ行けばそこら中にある。せめて竹が欲しいもの。梅までは望まないが。
 しかしそう考えているとき、高田はその順序、間違っている気がしてきた。松が下で梅が上。間が竹。これで合っていたのだろうかと。
 その梅、タイやヒラメに匹敵する事柄が二つも三つも入ってきた。これには高田も驚いたのだが、一つは誤報だった。違っていた。よく調べると嘘だったが、残りの二つは間違いなくタイ。
 一つはタイで一つはヒラメだろうか。だから梅と竹を手に入れたことになる。こんなにまとまってて来るのは珍しい。たまにタイは来るが、一つだ。そのあとは雑魚。
 天気も悪いし冴えない日。高田の調子も落ちているのに、この調子の良さは何だろう。
 高田はすぐに元気を取り戻した。夢と希望が出てきたのだ。というよりもそれが実現したようなもの。待ちに待っていたものが来たのだから、これほど喜ばしいものはない。しかも高田はそれに関して、何もしていない。
 釣りで言えば諦めずにずっと釣り糸を垂らしていただけ。どうせ釣れないと思いながらも、その行為を辞めなかった程度。何かを仕掛けたわけではない。
 二つほど大物を釣り上げたので、そこで運を使い切り、その後さっぱりと言うこともある。
 しかし、何だろう。調子の悪いはずの日なのにこんなにいいことが起こる。これはジンクスを書き換えないといけないかもしれない。
 よく考えると天気とか、高田の調子とかに関係なく、それは来ているのだ。
 だから、それは単なる偶然。よい偶然を高田は引き込んだわけではない。それらはそれらの事情で来ているのだ。高田とは無関係に。
 こういういいことが起こったので、高田はこのあとどんな感じでやればいいのかと考えたが、地味に釣り続けるしかないのだろう。釣れても釣れなくても。
 
   了


2024年4月25日

 

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