落城
岩見城は本城のすぐに近くにある。他にもそういう城がある。これは地形的なもので、本城は小高い山の峰にある山城。段々畑のように二の丸三の丸が並んでいる。本丸は峰の端だが、さらに別の峰が細いながら続いており、そこから本丸などが全部見えてしまう。
そのため、その峰にも城がある。これは砦のようなものだが、それなりに人数を詰めることができる。
この城、敵の侵攻を受け、本拠地の城近くまで迫られた。籠城しかないが、簡単には落ちない。
敵は本城近くの岩見城を狙った。ここは平地。簡単に押しつぶせるだろう。多くの兵は詰めていない。岩見一族が守っているのだが、このままでは危ない。
本城からの助けが来ると期待したが、その気配はない。山城から出ると危険。敵の兵の方が多く、平地での決戦は避けたい。
岩見城は街道沿いにある。援軍が来ても、通れなくなる。そのための城なのだ。
このあたりは岩見一族が支配していた。規模は小さい。そのため、家臣として仕えている。理由はそれだけだ。
まさか敵が攻めてくるとは思っていなかったのだろう。
そこで岩見氏は敵に下ることにした。戦いになってからでは遅いので、寝返った。そして城を明け渡した。その城、街道を守ったり、本条を守るためにあるため、規模は岩見氏の身代を超えた大きさ。だから、こんな大きな城はいらない。それに敵が来ているのに、味方は兵を出さない。だから大きな城を岩見氏だけでは守れないのだ。兵が足りない。
岩見氏が寝返ったことで、周辺の城が一つ消えた。歯が抜けた。周辺の他に城はさすがに寝返らなかったが、ほとんど戦わず、降参した。
岩見氏が寝返ったのは、主家に先がないため。籠城するつもりだが、滅びるだろう。籠城のために物資を運ぶ街道が使えない。そのため岩見氏が守っていたのだが、本城から兵は来ない。本城には余分な兵がない。それに山城から出るのを嫌がったのだ。
岩見氏はその街道周辺に僅かながら領地を持つ土豪に過ぎない。この領地さえ無事なら、何でもよかったのだ。
岩見氏の寝返りで、敵はすらすらと他の周辺城も抜き、本城を囲んだ。三の丸がまず寝返り、二の丸の半分も裏切った。本丸だけになったような感じで、その本丸からも抜け出す家臣や兵が続出した。
頼りにしていた同盟国からの援軍も、近くまで来たが、同じようにやられると思い、引き返した。
我が身が可愛い。当然のことだろう。
了
2024年5月6日