小説 川崎サイト

 

善高寺軍団

 

 善高寺軍団というのがあった。お寺だが、武力集団としても強い。当然寺領を持ち、小大名に匹敵する。そして、善高寺は独立した存在で、何処の勢力にも従属していない。
 鉄砲衆、騎馬衆、大長刀衆があり、鉄砲の数は多い。騎馬衆は騎馬だけの部隊で、これを突撃させると、それだけでも敵は逃げ出すほど。さらに騎馬鉄砲隊もおり、駆けながら発砲する。馬は子馬の頃から銃声を聞かせているので、驚かない。
 小山に囲まれた閑静な小盆地、森が多く、寺としてふさわしい場所。
 善高寺は寺だが、ほとんど城。堀を巡らし、土塁や石垣で囲い。大寺の本堂程の大きな建物が複数連なっている。寺の結構は城代わりになるのだが、善光寺は露骨に城の形をしている、しかし、それは見せかけで、平地にある城だし、地形的には防御力は弱い。
 この近辺では善高寺衆として名が知られており、主に傭兵。つまり雇われ兵として活躍している。
 善高寺を味方に付ければ勝ちというわけではないが、武装集団として役立っている。寺よりも戦闘が飯の種。
 善高寺の宗派はよく分からない。また、いろいろな寺から加わっている僧兵もいるので、曖昧にしているのだろう。
 そして、善高寺を仕切っている僧がいるのだが、これも複数。これが仏道ならもめるところだが、鉄砲衆の長は独立した存在。騎馬衆もだ。それらの隊長の寄り集まり。相談で決めるのだが、実際に仕切っているのは戦闘の苦手な僧で、これは普通のお坊さんだ。
 ただ経営能力が高いので、善高寺領内を仕切っている。つまり内政だ。さらに外交僧もおり、傭兵に関する取り決めなどを雇い主と交渉に当たっている。
 また、遠く離れた戦場にも行く。外人部隊のようなものだ。
 善高寺は私利私欲で動く。ここまで露骨だと、仏様に会わす顔はないだろう。
 ただ、善高寺の人たちは綺麗事を言わない。自分らのやっていることを知っているためだ。
 当然周囲の勢力は善高寺を寺だとは思っていなかったりする。
 
   了

 


2024年5月10日

 

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