想像の渦
川崎ゆきお
「想像の世界って、何でしょうね？」
「想像か」
「はい」
「よし、想像とは何かを想像してみよう」
「想像ではなく、もっとしっかり考えてください」
「考えるということは物事を想像することだろ？」
「それでは、想像でものを言ってる感じになりますよ」
「じゃ、何でものを言えばいいんだ？」
「想像ではなく事実で」
「事実か？」
「事実と想像とは違うでしょ」
「違うね。あったことだからね」
「事実のほうがただの想像より確かです」
「では想像に関する事実を述べればいいのだな」
「はい」
「わしはあらぬことを想像する。いや、想像しようとしてやっておるわけではない。急に物思いにふけることがある」
「急にですか？」
「そう、ちょっと一服しておる時かな。つまり、ぼんやりとしておるときに、何かを想像しておるようじゃ。これは事実だ。本当にあったことだ。一度や二度じゃない。何度もそんなことがある」
「それは想像でしょうか？」
「えっ？」
「想像とは、もっとシャープに、再現させてみることではないでしょうか」
「そうだな。わしの場合、目的なしに、頭に想像が渦巻くのじゃ」
「それは幻想でしょうか？」
「うん、そんな感じだ。一方的に見ているようなものだが、想像を織り成しているのはわしなんだがな」
「変なことを想像するのに似てませんか」
「似ておる。妄想かもしれん」
「じゃ、想像とは言えないようですね」
「きっと何かについての想像らしいが、その何かを先に決めて思いをこらすのではないようじゃ」
「やはり、妄想ですよ」
「妄想でも、何かに対しての妄想だろ。わしの場合、いきなり走りだすんじゃ。タイトルなしでな。途中から映画を見るような」
「その話も興味深いですが、僕が聞きたかったのは、想像とは何かです」
「じゃ、君の想像とは違っていたんだな」
「まあ、そういうことです…」
了
2007年01月24日