小説 川崎サイト

 

解決策

 

「そろそろ所替え、場所替えをしてもいい時期なのではありませんか」
「ここが慣れているのでいい」
「しかし、不満をお漏らしだ」
「どの場所でも同じようなもの」
「ですが別の場所ではここの不満は消えます」
「そちらにはそちらの不満がまた待っておるだろ」
「嬉しい不満、喜ばしい不満ならよろしいのでは」
「それなら不満とはいわない」
「さて、どうなされますかな」
「たまには別の場所へ行くのもいいし、また最近は頻繁に行っておる」
「やはり、今が不満なので、行くのでしょ」
「しかし、すぐに戻ってくる」
「長居はしないと、そして場所替えもしないと」
「住めば都。ここがいい。もっと良いところがあれば別だがな」
「それで方々訪ね歩いておられるのですね」
「しかし、ずっとそこに住む気はない。やはり、わしには合わんのだろう。たまにならいいが、ずっとそんな場にいるとなると、ちと違う」
「ではここに近く、今の不満が少ないところならよろしいのでは」
「探してみたが、ない」
「よく探されましたか」
「いろいろと噂を聞いて、行ってみたが、大したことはなかった。ここよりも厳しかったりする」
「いい場所だと思われていたのに、逆に不満が多かったというわけですね。しかし、まだまだ、探せばあるやもしれませんよ」
「あれば新天地。しかし、すぐには見つからんし、噂にも上らんので、ないのだろうよ」
「では、今の場所、この場所で落ち着きなされ。ここは悪いところではありませんので。多少の不満はあるにしても」
「その不満が命取りでな。一番大事な箇所が不満なのじゃ。他はいいが、大事なところでの不満は致命傷」
「では、他にお移りを」
「しかし、ほどほどのところがない」
「はあ。しかし、ここは世間で言われている都です。一番賑やかな場所ですぞ」
「都の様子が変わったのじゃ。それで、不満なのじゃ」
「それでたまに他の場所へ行くのですね」
「どうすればいい」
「この都の今の風潮に合わすしかありませんなあ」
「わしが変われというのか」
「その方が勝負が早いかと」
「外ではなく、内を変えるか」
「そうでございます」
「簡単に言うが、不満は抑え切れん。そこは変えられんぞ」
「じゃ、仕方がございません」
「投げたか」
「はい、解決策はございません」
「それが解決策じゃ」
「はっ」
 
   了




2024年6月14日

 

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