小説 川崎サイト

 

想像

 

 想像しているだけで、もう十分良い気分になったり、満足を得たりする。それが物ならまだ手に入れていないし買ってもいないのに。
 また物事も、想像だけで、まだ実際には起こっていないのに。
 想像だけでも楽しい気持ちになれるものだ。それは都合のいい想像のためで、いい風に解釈し、いい感じの想像をしているため。
 当然想像の上でも、ここは駄目だろうというのはあるし、ここは物足りないとか、ここは一寸不安というのもある。それでも想像だけなので大きく違えるわけではない。ただ想像できない箇所は無視するので、気付かないだけかもしれない。
 誇大評価ではないものの、勝手な想像が多い。これは想像しているだけなので何も起こっていないのだが、想像したと言うことが起こっている。
 商品なら買えば実際の物が分かり、それが良ければ満足を得られるし、また気持もいいだろう。そういう楽しくなることを目的とした商品の場合。
 楽しさの先取りは想像でもできる。現実はついてこないが。本物よりもいい想像をすると、実際のものよりも満足度が高い。
 しかし、満足というのかどうかは分からない。ただ、気持ちの上でそう感じたのなら、得な話だ。買わなくてもいいのだから。そして同程度の気分が味わえるのなら。
 現実では実際の商品が想像していたものではなく、不満に思えることもある。逆に想像していた以上のものだったりもする。
 いいことを想像し、ニヤニヤしている人もいる。まだ実際には起こっていないのに。
 これは先取りだ。もうそのニヤニヤだけで十分かもしれない。手に入れなくても。しかし、そうはいかないだろう。
 買う前は楽しいが、実物を手に入れてしまうと、急に面倒になることもある。楽しむのが面倒というわけではないが、現実のものだけに勝手な想像とは違うため。
 想像だけでいいという話ではない。それでは現実が動かない。進めない。ただ、楽しさだけとかの場合、実際は省いてもいいだろう。それがやらなければいけない事柄ではない限り。
 想像でも楽しく、実際、それを手に入れたり現実として起こったりしても、さらに楽しかった。というのがいい。
 二回楽しめる。そして実行できなかったとしても、想像の楽しさは残る。そしてそれはもう得たのと同じ。楽しいという感情だけだが。
 楽しいと思えるはずものを実行したとき、違っていた場合は苦しい。こんなはずではなかったのにと思う。それは想像の仕方が拙かったのだが、あまりクールな想像では楽しさはない。
 しかし、いいことを思い、ニヤニヤしているときの快さは捨てがたい。これは日常の中でできる。そして実行した場合もニヤニヤができるのなら、言うことはない。
 想像を超える実際のものでの快さは滅多にないが、想像していなかったおまけがついてきたりする。悪いおまけでなければ幸いだが。
 
   了




2024年6月20日

 

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