小説 川崎サイト

 

旅行計画

川崎ゆきお



「古い瓦屋根とか見ていると癒されるのよねえ」
「旅行かい」
「和風が残ってそうな古都とかね」
「僕は妙なものがっ食べたいなあ」
「旅行で?」
「別に旅先でなくてもかもわないんだけど、知らないものと出合えるだろ」
「旅行はいいわよねえ」
「ワープ感がいいのよね」
「気持ちも違うしね」
「その切り替えがいいのよ」
「どこか行きたいところある?」
「懐かしい風景が見たいわ」
「癒し旅行だね」
「観光って、そういうものでしょ」
「じゃ、温泉があれば、もっといいねえ」
「私は風景がいいわ」
「詩人だね」
「そうでもないけど、古いもの見てると落ち着くのよ。もう終わってるでしょ。だからいいの」
「迫ってくるものがないから?」
「そう、だから安心なのよ」
「僕は変わった食べ物がいいなあ」
「それも、癒し?」
「刺激だよ」
「刺激物ね」
「風景より刺激があるだろ。食べ物は体の中に入ってくるんだから。見てるだけよりもね」
「食べ物は和食がいいわ。だし巻き卵とか、大根の煮たようなのとか」
「和食なら、天麩羅定食かな」
「そんなごちそうじゃなくて、地味なのがいいの」
「それも迫ってこないからいいんだね」
「のんびりできるでしょ」
「最近忙しいの?」
「それほどじゃないけど、バタバタよ」
「バタバタか」
「でもこうして話してるだけでもいいかも」
「僕もそうかもしれないなあ」
「嘘、食べたいくせに」
「この近くのラーメン屋、制覇したよ」
「変わったのあった?」
「それは期待していない。制覇が目的だからね」
「旅先でもラーメン食べるの?」
「ラーメン旅行なら食べるけど」
「聞いたことあるわ。飛行機に乗って、目的のラーメンだけ食べて、すぐに帰ってくるの」
「あるよ。僕もやったことある。高いラーメンだよ。だから美味しい」
「旅行の目的が違うみたいね」
「だから、こうして話してるだけでいいんだよ」
「私も」
 
   了



2008年02月27日

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