小説 川崎サイト

 

才能のあるなし

川崎ゆきお



 才能とは努力を継続する力だと言えば、単純だが、果たしてそうだろうか。
 高田は才能豊かな先輩から、そう言われた時、疑問を感じた。
 思い返せば、高田は努力の人だった。だが、それをいくら続けても何も起こらなかった。
 起こっていることはただ単に努力している姿だ。
 努力するために努力しているようなものだった。
 成果があるとすれば、努力を続けている姿だ。
 何かのために努力するわけだが、高田の場合、すべてにおいて努力の人だったのだ。
 だから、十分努力を継続していた。それを才能だと言われても、魅力はなく、苦しいだけだった。
「君は何のために努力してるんだ」
 先輩からまた言われた。
「多方面で」
「それは癖か」
「はい」
「確かに継続はしている。だが、成果が何も上がっていない。君の仕事ぶりは平凡なもので、抜きん出たものではない」
「では、才能がないのでしょうか」
「才能は努力の持続であり、継続だ」
「はい、やってます」
「だから困るんだ」
「僕も困っています」
「才能がないのかもしれんなあ」
「努力の継続が才能ではないのですか」
「そうだよ」
「じゃ、僕には才能があるはずなんでしょ」
「まあ、そうなるが、成果を出さないと優れているかそうでないかが分からないじゃないか」
「成果はそこそこ」
「それではねえ」
「努力し続けても、芽が出ないのなら、努力の中には才能がないのではないでしょうか」
「努力が足りんのだよ」
「でも量ではなく、続けることが大事なんでしょ。継続は力なんでしょ。ちゃんとやってますよ」
「おかしいなあ」
「途中で投げ出したりはしません。ずっと続けています」
「要領とか、効率が悪いんだよ」
「それも日々研磨してます」
「やはり君には才能がないのかなあ」
「そうでしょ、努力の継続なんて僕にでもできますよ。才能がなくてもできるんですよ」
「継続できるのが才能なんだよ」
「してます」
「じゃ、君には才能があるんだ」
「やっと先輩から認めてもらえました」
「才能があるだけでは何のメリットもない」
「えっ、あっ はい」
 
   了


2008年03月04日

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