小説 川崎サイト

 

現実を変える

川崎ゆきお



「物は言いようだね。それで現実が変わればいいんだが、そうならない」
「ですが、受け取り方や、受け止め方が違って来るでしょう」
「しかし、現実は変わらない」
「言い方によって、違う現実の解釈ができますよ。解釈を変えれば現実も変わるのではないですか」
「まあ、どうでもいいことは変わっても支障はないがね。それはお互いにだ」
「重要なことでは、変わらないということですか」
「そうだね。現実を変えないと、基本的に駄目だな」
「でも現実が変えられない場合、見方を変えることも必要でしょ。すぐには変えられない現実や、ほぼ変えることが不可能な現実もあるでしょ」
「それをやっていたが、すぐに戻される。ごまかしが効かない」
「やはり、現実を変えないと駄目なんでしょうね」
「そうだね」
「でも変えられない現実を変えるのは不可能でしょ」
「だから、困っておる」
「ですから、それも含めて、それが現実なんですよ」
「変えられないことが現実か」
「はい、そうです」
「偽装することも現実か」
「そうです、現実を変えることがそもそも偽装なんです」
「しかし、偽装することもまた現実だろ」
「偽装だったことが現実なんです。現実に戻っただけです」
「いろいろ現実が出てきて混乱するなあ」
「その混乱も現実なんですよ」
「じゃ、なんでも現実になってしまうじゃないか」
「そうですねえ」
「やはり現実を変えないとね」
「現実を変えようとする現実があるわけです」
「まだ、言うか」
「まあ、そういうものだと思い、受け入れることでしょうねえ。それで、自分にとっての現実が生まれますよ」
「それは解釈を違えただけだろ」
「うまく化け切れば、安定します」
「そうかな」
「この現実も、安定しているように見えているだけなんですから」
「分かった。勝手な解釈をするよ」
「皆さん、やっていることですから」
「うむ」
 
   了



2008年03月27日

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