小説 川崎サイト

 

魔物の徘徊

川崎ゆきお



 植島は地下鉄改札付近の雑踏に立っていた。
 人間ではない人間が現れるのを待っていた。
 人ではない人とは、ある人に対する評価ではない。人の姿をした魔物だ。
 植島が、その改札近くにいるのは偶然だ。ここでなくてもかまわないのだ。
 魔物はどこに姿を現すかは分からない。だから、どこでもよいのだ。
 ただ、人込の中に現れやすい。
 それも植島の考えだ。
 人が多いと、紛れ込みやすいためだろうか。 植島は暇な時、よくここに立つ。待ち合わせで立っている姿に近い。
 一時間以上は立てない。
 植島を見ている人間はいない。自動改札で駅員の姿は見えない。
 だから、何時間でも立っていられるが、植島はそれ以上立つと飽きるようだ。
 魔物が現れる確立は低い。
 十回に一度あるかないかだ。
 植島はこれまでに四回目撃している。その意味で、全く発見できない確立ではなく、たまにあるわけだ。
 十度に一度なら、常に魔物がうろうろしていることになる。
 それも複数の魔物が頻繁に出現していると言ってもいい。
 植島が見張るのは一時間だ。十回一回なら、十時間立てば見つかる確立だ。
 しかし植島はプロの魔物ハンターではない。また、そんなことでのプロなど存在しない。
 魔物であるかどうかは、雰囲気で分かる。
「これは人間ではない」と、直感で分かる。
 植島にはそれを感知する能力があるのだろう。他の人が見ると普通のビジネスマンだが、植島は見抜いてしまえる。
 魔物を発見すると尾行することもある。魔物は徘徊しているだけで、それ以上、人とは関わらない。関われないとも言える。
 植島は郊外まで尾行したことがある。帰宅時間帯だ。その魔物は駅で降り、しばらく駅前を徘徊し、また電車に乗った。
 返り先がないためだ。魔物は家に住んでいないし、家族もいない。
 植島の調べでは、魔物はどこかで発生するようだ。魔物が出てくる場所があり、消える場所がある。
 その出入り口は固定されていないようだ。
 魔物のことを植島は友人に話したことがある。
 気の利いた友人が一人いて、その言によると、魔物は植島の頭の中から出入りしているらしい。
 植島はそんなことはない、と否定しない。
 
   了


2008年05月03日

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