小説 川崎サイト

 

見回り隊

川崎ゆきお



「見回り組みなんですけどねえ」
「新撰組みたいですなあ」
「町内の防衛隊ですから、まあそんな意味合いもあるでしょうなあ。それはまあ、いいんですがね。やってもらっても」
「金魚の糞みたいにぞろぞろ歩いていますなあ」
「その後ろなんです」
「うしろ?」
「いつも八人メンバーなんですけどね」
「その後ろといえば、警官でしょ」
「巡査二人が付き添ってます」
「それもまた異様ですなあ。で、その巡査は徒歩ですか」
「はい」
「見回り隊の見守りですかな」
「護衛ですよ」
「それなら、巡査だけで巡回すればいいのにねえ」
「巡回してますよ。でもパトカーが多いですね。バイクとかも」
「徒歩は」
「いないでしょ」
 二人の老人は、皮肉な笑顔を浮かべながら話している。」
「それより、その後ろというのは何ですか」
「ああ、正しくは巡査の後ろではなく、自治会の見回り組みの後ろです」
「はあ」
「九人いるときがあるんですよね」
「参加者が増えたんでしょ」
「いや、最高で八人が取り決めです」
「じゃ、一般の町内の人が加わってるんでしょ」
「そろいの緑色のジャンバーを着ていますからね。メンバーでない人なら、すぐに分かりますよ」
「で、どういうことを、おっしゃりたいのですかな」
「混ざっているのですよ」
「何が」
「さあ」
「まさか、幽霊じゃないでしょうね」
「聞いてみたのですよ。そのことを」
「どうでした」
「出発するとき八人だったのに九人いるときが確かにあるって」
「原因は」
「数え間違いだろうって」
「そんなことで、いいのかなあ」
「金魚の糞ですからなあ。少々長くても問題はないんでしょ」
「そんなことで、いいのかなあ」

   了


2008年06月26日

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