小説 川崎サイト

 

独走

川崎ゆきお



 ここまでくると上田の追従者はいない。それより、上田を追う人など最初からいない。
 また、上田が目的とする事柄を注目している人もいないだろう。
「だろう」とは、いる可能性もあることを指す。上田と同じような行為に走っている人間はいるはずなのだが、表に出てこない。
 上田の目から見ても、似たようなことで走っている連中と滅多に遭遇しない。
 この「滅多に」は、本当にいるのではなく、上田が「そうかもしれない」と感じているだけのことで、上田と同じ目的の人ではない確率が高い。
 いずれにしても表立って言えるような事柄ではないだけに、話題にさえならない。当然ニュースにもならない。
 また、それを研究している人もいないだろうし、図書館に行っても分からないだろう。
 専門性が高すぎるからではなく、低すぎるからだ。
 そのため、ジャンルとしても確立されていない。
 上田はその意味で独走状態だが、他のライバルが見えないので、そう思っているだけかもしれない。
 上田はネットで、調べてみた。検察結果は多く出るが、その言葉が使われているだけで、上田がやっている事柄ではない。近いのだが、違うのだ。
 世の中は広い。上田と同じことをやっている人間が必ずいる。
 上田はブログを作り、そのことを書いてみた。
 初日は数多くのコメントやトラックバックが入った。
 いずれも広告だった。
 新規ブログにありがちなことだ。
 上田は数週間毎日記事をアップした。
 ブログのアクセス解析を見ると、アクセスがあったのは初日だけで、その後たまにアクセスはあったが、最近は誰も見ていないのか、アクセス0の日が続いた。
 やはり上田のやっていることは、上田だけがやっているのかもしれないと思うようになった。
 上田以外の人間は、誰も興味を起こさない事柄なのだ。
 上田は独走状態を今も続けている。
 ライバルはいない。

   了

 


2008年07月2日

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