反則
川崎ゆきお
「これは反則だなあ」
部長は価格表も見る。他社の価格だ。
ライバル企業十社のうち非常に価格が安い二社ある。
「高田君、どう思う」
「確かに反則ですねえ」
「こちらは推定売り上げ表だ」
やはり、安い二社がダントツだ。
「同じものがこんなに安くできるとは思えないんだが」
高田は商品サンプルを見せる。
「これか」
「同等です」
「じゃ、人件費か」
「いくら人件費が安い国で作っても、これほど安くはできません。材料費さえ出ませんよ」
「公正取引違反だ」
「でも、部長、この商品はもともと闇ですから。最初から不正なんですよ」
「しかし、取り決めがあったじゃないか」
「それをこの二社は無視したようです」
「何とかならないかね」
「元々が闇値なんです」
「じゃ、どうする」
「それは部長の判断で」
「分かった。撤退する」
「はい」
「勝負にならんでしょ。作っただけ損になる」
「でも、当社の製品を愛用しているお客様もいますし、メンテナンスも」
「メンテナンス部門だけ残し、撤退だ」
「でも、どうして安くできるのでしょうね」
「安くできないさ。赤字だよ。この二社は」
「他社が撤退した頃、値を上げるのでしょうかね」
「そのとき、こちらも復活させればよろしい」
「でも、客は全部取られていますよ」
「まあ、そうだが」
「撤退でよろしいでしょうか」
「ああ、客を取られてもいい。相手にならないほうがいいんだ。無視すればいいんだ」
「その二社の目的は何でしょうか」
「この二社は仲がよい。同族会社だ。元をだせば一社だ」
「で、目的は」
「独占だろうが、損をするだけさ」
「しかし、我社の売り上げも落ちますよ。撤退すると」
「それぐらいのダメージですめばいい。また違う製品を出せばいいじゃないか」
「はい」
「反則する奴は相手にしないことだ」
「はい。では、新しい不製品の開発を開始します」
「そうしてくれ」了
2008年07月7日