小説 川崎サイト

 

孤島のブログ

川崎ゆきお



 作田はネットで活躍していた。
 ブログを作り、日々の経験を書き連ねていた。
 他人のブログにもコメントを数多く付けた。その見返りか、作田の記事にもコメントが連なるようになった。
 それが三ヶ月ほど続くと、ブログを書くのもコメントをつけるのも飽きてきた。
 徐々に他人のブログへも行かなくなると、コメントも減ってきた。
 半年後は、もう自分のブログしか見に行かなくなり、投稿間隔も減り始めた。
 そうなるとアクセス数も減り、静かな島になった。
 一年後、孤島になった。
 それでも作田は日々の出来事を投稿し続けた。
 見るのは自分だけかというと、そうではないことが分かった。
 アクセス数がゼロにはなっていない。
 新規記事はそれなりに目立つ場所に瞬間だが表示されるため、見に来る人がいるのだ。また、検索で探して来る人もいた。
 今では常連の人はいなくなり、作田も誰かのブログの常連ではなくなったのだが、まったくの孤島かといえば、そうではないことが分かった。
 作田は園芸趣味があり、植物の名前で検索をかけることがある。そんなとき、見知らぬブログが出てくることがある。
「こんな感じで、私のブログを見に来る人もいるんだ」
 作田は初期の頃のような他のブログ作者との交流はなくなったが、今のゆるい接触のほうが好ましく思えるようになった。
 作田も覗くだけだし、来訪者も覗くだけだ。それ以上の関係は生じなかった。
 ところが、ある日、作田の記事にコメントが入った。
 これは非常に目立った。コメントを書いた人も、誰からのコメントもない場所で書くのは勇気がいったはずだ。
 作田は早速、その人のブログを見に行った。きっと営業でコメントを残している人だと思いながら。
 ところが、普通のブログだった。
 最初、気になったのは、似ていることだ。作田のブログと似たような空間なのだ。
 作田自身ではないかと思えるような記事内容だし、コメントもまったくない。
 作田は記事を読んだ。ネット日記のようだ。
 最初は人気ブログだったが、更新を怠り、間をおいたので、徐々にアクセスも減り、今では絶海の孤島にいるようだ。たまには他人のブログにコメントを残して、反応を確かめたい。と、書かれていた。
 作田は、それを見て、自分も孤島めぐりをやろうと思った。
 
   了


2008年07月19日

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