小説 川崎サイト

 

アリスの森

川崎ゆきお



「森へ帰ります」
 アリスが言う。
「森って、どこ」
 アリスは山を指さす。
「それは山だろ」
「森です」
「あれは山だ。船坂山だよ」
「それを森って言うんです」
「おかしな娘だな」
「じゃ、森ってどんな感じなの?」
「平野部の森林が森だよ」
「木が多いところが森よ」
「しかし、山は森とは言わん」
「じゃ、森はどこにあるの」
「そこの鎮守の森が森だ」
「あんな小さな森は森じゃないわ」
「で、どうして帰るんだ」
「森から来たから」
「船坂山から来たのか」
「そうよ」
「じゃ、船坂山へはどうして来た」
「知らない」
 アリスは難しい顔をした。
「船坂山のどこから来たんだ。お嬢ちゃん」「木の中から」
「大木の中からか?」
「うん」
「そこがワープポイントかい」
「知らない」
「じゃ、船坂山に来る前はどこにいた」
「洞窟」
「船坂山の地下か」
「知らない」
「じゃ、洞窟の前はどこにいた」
「森」
「どこの山だ」
「山じゃない」
「平地の森林かい」
「うん」
「では、森の前はどこにいた?」
「おうち」
「そうか、で、また戻るのかい」
「うん」
「ここが気に入らないのかい」
「うん」
「どうしてかなお嬢ちゃん」
「森なのに山だから」
「行っていいよ」
「うん」
 
   了

 


2008年10月24日

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