ニートの戦い
川崎ゆきお
夜中、ニートの大村は同じニートの岸和田に呼び出され、ファミレスで会った。
ニートだが引きこもりではない。二人とも人と会うことは苦にしていない。
「あとどれぐらい持つかなあ。将来のこと考えると心配だよ」
岸和田の用件はそれだった。
大村も同じ悩みを持っている。
「親がついに言い出した。今度は本気だ。このままでは危険だ」
「働けって?」
「まあな」
「でも、就職難だろ。仕事先などないよ」
「それを分かった上で言ってるんだ。全く状況を把握していない発言だ」
「職業訓練所でごまかすしかないなあ」
「それはまずい。修了すれば就職しないといけないじゃないか、それに短期だ。せめて数年は訓練して欲しいよ。その間、安心安全だ」
「で、どうするんだ」
「前門の敵だよ。この目前の敵である親の攻撃をいかにかわすかがテーマだ。ここが最前線だ」
「それを何とか押さえ込めてもだ、後門の虎であるニート巡回員がいる」
「ああ、あの暇人か、あれは何とかなる」
「いや、親はニート巡回員とグルだから、親も正面攻撃が無理なら、後方から奴らに攻めさせる」
「そうだな。バランスが大切だな」
「だから、親とは何となくの和解がいい。完全に言いくるめてしまうと、巡回員に攻めさせるに決まっているからな」
「巡回員は精神的なケアだろ」
「いや、結局はニートをやめろということだよ。だからケアしに来るんだ」
「この前来た巡回員、ニートだったぜ」
「元だろ?」
「いや、現役だ」
「それだ!」
「解決法が見つかったのか?」
「ニート支援をするんだ。これから」
「ほう」
「これなら社会的な行為だ。誰も反対できないだろ」
「それって、お金にならないだろ」
「ボランティアだからな」
「それでは前面の敵の親が納得しないかも。問題は金を稼げってことだから」
「そのためには、世の中に出て、社会奉仕することで、社会性を身につけ、それでやっと就職できる資格となるんだ。だから、就職のための活動だよ。これで前面の敵も納得するし、後門の虎も納得する」
「なるほど、完璧だ」
しかし二人ともその後、特に動いた気配はない。
了
2009年1月27日