幽霊博士
川崎ゆきお
「幽霊って、本当にいるのかねえ」
幽霊博士の友人が聞く。
「言葉があれば、それに対する事柄がある。という意味で幽霊は存在する」
「じゃ、実在は」
「実在?」
「実際にいるかどうかですよ」
「そうだね」
「どう、説明しているのです」
友人が詰め寄る。半ば冗談だ。
「強い気持ちが残ることがあるんですよ。エネルギーのようなものが」
「それって、子供の頃誰でも考えることだったんじゃないか」
「そうだね」
「強い気って、恨みを残して……とかでしょ」
「そうだね」
「それはどこに出るの」
「その場所が多いと言われてるね」
「じゃ、刑場なんて沢山出そうだね」
「そうだね」
「戦場とか、悲惨な事故があった場所とか」
「そうだね」
「それじゃ、うじゃうじゃ出るはずなのに、出ないよね」
「困ったものだ」
「君は幽霊博士なんだろ」
「それはあだ名だ」
「そうか、ニックネームだったか。すっかり忘れていたよ」
「だから、特に幽霊に詳しいわけじゃないんだ。あまり質問するな」
「誰が、名付けたんだっけ」
「太田垣だ」
「ああ、そうだった。思い出した。おまえが幽霊のように青い顔で細かったから」
「そうだったな」
「よく考えると、僕たちは幽霊を知っていたんだ。幽霊を知っているから、幽霊博士って名付けたんだ」
「影が薄いのも幽霊だね」
「ああ、存在感が薄い人な」
「うんうん」
「存在しないことも幽霊だよ」
「あるある。幽霊会社」
「やはり幽霊はいるかもしれないね」
「どうして」
「見えないだけで、いるかも」
「ビジュアルがなくても、感じること、できるかもしれないよ」
「それね、感受性の高い人、霊感の強い人っているよね」
「病気じゃないかな、それ」
「そうだね」了
2009年3月7日