第三王女軍
川崎ゆきお
「どうもおかしい」
ある大国の軍参謀が首を傾げた。
隣国の小国が急に若返った。
クーデターでも起こったのだろうか。
参謀は調査を命じた。
その報告では、第三王女が実権を握っているらしく、その王女の元に若き戦士が集まっていることがわかった。
小国でもなかなか大国に飲み込まれないのは、この小国に優秀な軍人がいたからだ。
「ここは攻めてはどうかな」
国王が参謀に相談する。
今まで、何度も攻めたが手痛い敗戦をしている。負けが続くと、さすがに攻める気を失っている。
「第三王女はまだ幼い。少女ではないか。それが国を牛耳っているとなると、チャンスとは思わぬか。いつもの、あの連中じゃなく、軍部も若返っているようじゃし」
参謀はさらに調査を続けさせた。
それによると、第三王女直属の部隊がどうやら主力のようで、このメンバーが若いらしい。
そして、この小国は、隣国のさらに小国の一部を切り取ったようだ。
これで第三王女直属の精鋭部隊の強さが知れ渡った。
大国の国王はそれを聞き、以前よりも強くなっていることを警戒し、攻めることをあきらめた。弱くなっていることが前提だった。
大国の参謀は、まだ首を傾げている。
まだ、少女の王女にそんな力があるとは思えない。だから、直属軍の若き戦士たちが優秀なのだろうと思った。
誰でもそう思うはずだ。
参謀は、その戦いの調査を命じた。
第三王女軍が攻め込んだ小国は、油断していたようだ。王女の軍をなめていたのだ。それで、それほど兵をあてがわなかった。
ところが、あっという間に、領国の一部を奪われたのだ。
王女の率いる精鋭部隊の勝利ということだ。
大国の参謀は、その王女軍の指揮官を調べさせた。
すると、まだ十代の戦士で、身分も低かった。
参謀は、また首を傾げた。
今度は、その小国の昔からいる将軍たちのその後を調べさせた。
その結果は、大国の参謀を満足させるものだった。
王女軍が攻め込んだとき、実は、ベテランの将軍たちが、いつものベテラン兵を引き連れ、側面から攻撃し、すぐに引き上げたようだ。
つまり、王女軍は見せかけだったのだ。
大国の参謀は、それを知り、国王に王女軍と戦うことをやめるよう進言した。
さすがに、隣国の小国は手強い。第三王女軍という罠でおびき出そうとしていたのだから。了
2009年5月29日