川崎フォトエッセイ  その216  ベース    ←前 →次  HOME

 風景の中に、ベースとなるものが加わっていると、それなりに落ち着く。そのベースは、空だったり山だったりする。四季の移り変わりで変化するものの、そのものは昔からそこにあるため、滅多なことでは消えて無くならない。

 そのベースの一つに、水田があったのだが、最近では数が減り、ベースにならなくなってきた。それでも、ある季節になると水が引かれ、田植えになり、やがて黄金の穂が実る。これを僕らの先祖はずっと見てきたため、農耕民族といわれるほど、細やかなベースが完成していたのだ。

 だから、風景としての、観賞用のベースではなく、文字通り食べていくためのベースだったわけだ。その意味で、他で食べらられるのなら、このベースはなくなってもいいことになる。まあ、人が作ったベースだけに、人の都合で変化するわけだ。

 山や空といったベースよりも、僕としては人工的なベースのほうが好きだ。それは、そこに生活感があるため、わかりやすいためだ。