川崎フォトエッセイ  その610  喫茶店空間      HOME

 喫茶店空間はニュートラル性が高い。お茶を飲むという行為が基本的にあるだけで、固有のイベントがあるわけではない。

 街頭に出て、ちょっと一服したいときには重宝する場だ。市街地にあっても、郊外にあっても、茶店的性格がある。休むという行為は、積極的に何かをするわけではない。その意味で、どこにもギアが入っていないニュートラルな場になっている。

 基本的には休む場だが、話をしたり、読書をしたりとかは自由である。お喋りをするにしても、そこは自分の部屋ではないため、主客の関係は曖昧だ。ある意味で対等とも言える。

 初めて来た町の喫茶店は、店の人も客も、抽象的な存在である。知らない人々だし、僕も見知らぬ客という匿名的存在でしかないため、固有の感情を乗せなくてすむ。

 ひととき、場と座を確保し、立ち去る。常連客になってしまうと、切り離された空間の醍醐味が薄れてしまうが……。