川崎フォトエッセイ  その666  定番      HOME

 定番の風景がある。絵はがきのような風景を指す。定番は定番で、誰にとっての定番なのかによって範囲が違ってくる。

 観光地で売っている絵はがき写真は、風景写真の定番である。それは風景画の定番にも近いが、写真は絵ほどデフォルメされたか書かれ方をしていないため、定番に対する個性を感じさせるが、その個性的見方が、定番の場合、ややもすると邪魔になる。

 つまり、ありふれた絵はがき写真のような風景を見たいときもあるのだ。これは個性を廃して出来るだけそのものに近いものを希望するのではなく、おそらくは多くの人が感じているだろうという絵を見たいのである。

 観光地で没個性な境地に立つことは、自分をその中に埋没させることによって、定番風景の一部になることだ。

 定番の絵を見ていると安心するのは、多くの人がそれを見ており、それを共有するところにある。