川崎フォトエッセイ  その699  雛形への吸着      HOME

 人知を越えた世界は、人知を越えているだけに、伺い知れない世界である。しかし「伺い知れない世界」の存在を人は太古から知っている。その領域を知っていても、その領域内のことは知らないわけだ。

 その領域内の展開は、この現実と似た雛形が利用されている。そうでないと、この世の人達が認識できない。

 人知を越えていない世界とは、現実のこの世界のことだが、その世界でも、伺うことが出来ない領域がいくらでも存在している。たとえば人の気持ちとかを推測するとき、相手の本心や事情などは、他人からは分からないままである。ただ、コミュニケーションが可能なため、聞き出すことはできるので、謎のまま永遠に分からないわけではない。

 他人の気持ちが分からないと同じように、自分の気持ちも分からないこともある。その場合、本心というのものが、曖昧となり、結局は社会的に流通している気持ちに吸着され、一般化される。これで、分かったような気持ちになるのだが、実際とは違うことは言うまでもない。