その856
包む
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数十年前の八百屋さんなら、野菜や果物はそのまま陳列していたように思える。つまりラップしていなかったということである。
それでも非常に高価な果物などは、柔らかな紙でくるんでいたように記憶している。
包むことにより、世界は外部の影響から受けにくくなる。単にそれだけのことではないかもしれないが、その機能とは裏腹に、いちいち包みを取らないと取り出せない。
ラップによるこの手間は、決して人の指や爪に優しいものではない。
数十年前の話に戻ると、狭い路地とかに車が入り込むようなことも少なかった。
車は人を包んでいる。内部は独立した世界ができている。これは果物を守るためのラップと一緒にはできないが、中の人間を守るという感じでは機能は同じだ。
ラップや包んでいるものをはずすと、機能的には裸になる。
「裸のつき合い」…それが少なくなったのもラップのせいかもしれない。